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第二章
47四大公爵家
しおりを挟むかつてこの国は四大公爵家が存在した。
強い権力を持ち、現在は四大公爵家のほとんどは没落している。
過去にクーデターを起こしたからだ。
もう三人の公爵は権力を失っているが唯一逃げきれた人物がゼノ公爵だった。
昔ほどの権力はないが、貴族派を率いていたのだ。
「彼は王族派の権力を弱らせるために、あの女狐を利用しました」
「クレミア公爵は傀儡だったと?」
「薬で洗脳状態にあったようで」
ここまで聞かされると何をしているんだと思ったが、女に溺れた男の末路かとも思った。
「その方はどうなりますの」
「無期懲役です…といっても持病を持っているので」
「そうですか」
もう長く生きることはできない。
牢獄で一生を終えてそのまま死ぬだろうが、その一族も罪を背負うことになる。
「これで貴族派は力を失うでしょう。貴女のおかげです」
「私は大したことはしてませんわ」
実際したことは多くなかったのだが、彼らからすればバーバラの標的になったので事はスムーズに進んだ。
バーバラが社交界でソフィアより有利に立ったと思い込んだクレミア公爵夫人は油断していて違法的な薬を大量に購入した。
そのルートを調べることもできたのだから。
「後日、そのルートを明らかにして薬の売買をした商人も罪に問うつもりです」
「私にできることがあるなら何でもおっしゃってください」
「ありがとうございます。では私はこれで失礼します」
去って行く宰相を見送りながら内心で溜息をつく。
「これから大変でしょうね」
「まったくだ」
「きゃあ!」
音もなく現れたエリオルに悲鳴を上げる。
「酷いな」
「気配を感じなかったわ」
「急いで仕事を片付けて来たのに」
疲れ気味のエリオルは手を広げて合図をする。
「おかえりなさい」
「ただいま」
久しぶりの抱擁に二人は安堵の息をついた。
一番安心できる気がした。
「本当にこんなことはこれっきりにしてくれ」
「ごめんなさい」
「もういい」
もうこんな危険な橋を渡ることはしたくないが、エリオルは侯爵の爵位を持ち。
ソフィアは王女の地位を持っている以上今後も国の為に危険はつきものだ。
だからっ絶対とは約束はできないのだが。
「上手くやります」
「頼むから大人しくしてくれ」
「あら?それは既に私ではないでしょう」
ただ静かに従順な妻となるのはソフィアではないのだが、この時は恨めしく思うエリオルだった。
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