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第二章
46芋づる形式
しおりを挟むクレミア公爵を罰したことで、王族に反旗を翻そうとしていた貴族の粛正成功した。
そのおかげで、宰相を筆頭に他の大臣からも感謝の言葉が送られた。
「この度は誠にありがとうございました」
「いいえ」
「公爵家のやりようは目に余っていました。しかし証拠を掴む必要がありまして」
実は今回、王族派の大臣達が王宮を開けていたのは調査の為だった。
表向きは視察ということにして王宮内でソフィアを一人残すことにすればぼろを出すと考えたのだが。
「まさかここまで浅はかだったとは思いませんでしたわ」
「下手をすれば取り返しのつかないことになってました」
国内でも薬草の農地を手中に収めている侯爵家が裏で麻薬も制作しており、それを売買していた事実も明るみに出た。
お茶会に使われた茶葉もそれに近い物だ。
適量ならば問題ないが、美を欲する令嬢達は量を考えずに使っていた。
しかし制作する側がその危険性を十分に熟知していないとは恐ろしいと思う一方で薬の使い方をまるで理解していない事に呆れてもいた。
「例のお茶はどうなります」
「もちろん処分です、農地もすぐに処分です」
「ちゃんと使えばどれだけ役に立ったか」
薬草を育てるのにどれだけの費用と労力が必要になるか。
その農地を燃やさなくてはならないなんて、惜しいと思うが、今回ばかりは致し方ない。
「それで彼女達は」
「便秘でもないのに即効性の下剤を摂取したので…まぁ」
医師の報告ではかなりげっそりしてやつれているとこのことだ。
食事もままならなず、療養所では今でも苦しみ食事もとれない程だったか。
「元は美しい令嬢だったので見る影もないでしょうな。自業自得ですか」
「でしょうね」
同情はしないが少し哀れになる。
「それで本題に入りますが、公爵家の背後にいた者がおりまして」
「貴族派の強硬派ですね」
「やはりご存じでしたか」
ソフィアは一度だけ貴族派の強硬派に顔合わせをした。
その中でリーダーらしき人物と会っているのだ。
「ゼス公爵閣下です」
「王族も警戒心を持っている方ですね」
「はい」
国王の従兄に当たる人物で、今も警戒心を持っている人物だ。
年齢的に爵位を譲ってもおかしくないが未だにその地位にいるのだ。
「以前から王女殿下にもエリオル様にも高圧的な態度でしたが、ソフィア様の存在を疎ましく思っていたようで」
「どこの馬の骨か解らない女が王女になるのが気に入らないのでしょう」
隣国の田舎貴族の娘が王家の仲間入りするのが不快なのはすぐに解った。
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