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第二章
44王女の資格
しおりを挟む普段から見栄を張りたがる貴族令嬢にとって今の状況は屈辱だった。
すぐにでも用を済ませたいが、この場にいる騎士達や宮廷医師の前でトイレに駆け込むなんてマナー違反もいいところだった。
「何だ、この匂いは」
「ガスですわね。しかも溜まっていたと見えます」
「それは…つまり」
誰も口にしなかったが視線を逸らせすぐに窓を全開に開ける。
「女性騎士を呼んだ方がいいな。この場でされたら迷惑だ」
「ええ…正直引きますね」
「何を食べたらこんな臭いを」
三人は屈辱的な視線に泣きそうだった。
「わっ…私は!」
「あら?力を入れると大変ですよ」
クスっとソフィアが笑うとバーバラは悲鳴を上げた。
「いやぁぁぁあ!」
「バーバラ様…」
「どうか!」
二人もブルブル震えながら耐えるが時間の問題だった。
その後女性騎士が現れ三人は拘束された状態で部屋を出て行ったのだ。
「何とも無様なことだ」
「ええ、本当に…この後寝たきりでしょうね」
「何?」
毒ではないが使い方によれば毒になる。
「下剤は使い方で命を奪います」
「なんというか…」
お茶会での失態は瞬く間に噂となるだろう。
騎士達も基本礼儀作法を叩きこまれほとんどが上流階級だった。
貧しい平民もいるが女性の嗜みとしてありえないのだ。
「あれが社交界の中心にいる貴族令嬢とは嘆かわしいですな」
「ええ…まったく」
いくら騎士といえど、目の前で見せられたのだからどん引きしてもおかしくない。
それに、あの傍若無人な態度を見せられているときに軽蔑の視線を向けていたのだから。
「私もやり過ぎましたわ」
「何を仰せになられますか!」
ソフィアは少しばかりやり過ぎたと思ったが、騎士達は全否定をした。
「ソフィア様に落ち度はございません」
「自業自得です」
「あんな女に社交界を仕切る資格はありません」
騎士達はバーバラの存在を良く思っていなかった。
身分をちらつかせやりたい放題をしていた。
貴族としての役目を果たさず身分が低い者を道具のように使い捨てる。
人を人とも思わないバーバラを憎んだのだ。
そんなバーバラに真っ向から立ち向かったソフィアを悪く言うはずもない。
「何時いかなる時も堂々とあの女と対峙されていたではありませんか」
「そうです。ソフィア様が矢面にたってくださったからこそ、下級貴族の令嬢の悪意は貴女様に」
「私達は知ってます。皆をお守りくださったことを」
ソフィアはこの国の人間ではない。
だが、既に騎士達にとってはこの国の王女同然だった。
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