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第二章
40すべては最初から
しおりを挟む「正式な調査をお願いします」
ソフィアははっきりと告げた。
しかし未だに抗議する二人は呆れめていなかった。
「罪を認めてください」
「調査を依頼して長引かせても無駄ですわ!いい加減に…」
ソフィアは何故気づかないのかと思った。
自分達で逃げ場所を失くしていることを。
調査を拒むことはやましい事があるから。
この場に医師がいる時点で、三人の発言は矛盾が生じているというのに。
「何故ですの?王宮内の暗殺未遂は調査されるべき。もし私を犯人だとおっしゃるなら猶の事。ちゃんと調査をして裁判を行うべきです」
「貴女はご自分が何を言っているか解っていますの」
「なんて酷い人なの!事を荒立てて国を混乱に導くなど魔女の所業ですわ」
バーバラを除く二人はソフィアの態度にいら立つ。
普通の貴族なら怯むか、誤魔化そうとするのだが、普通の貴族令嬢ではないソフィアはこの場で逃げの姿勢を見せることがなかった。
ここで揺さぶりをかけるつもりだった。
(馬鹿な人たち…)
バーバラは公の場で感情的になり冷静な判断もできなくなっていた。
「私を犯人というなら徹底的に調べてください。その為なら喜んで牢屋に入りますわ」
こんな令嬢の為に国が混乱させられるなんてあってはならないことだ。
特に自分の立場を完全に忘れたバーバラをソフィアは潰す気満々だったのだから。
「バーバラ様、公爵令嬢として正しい判断を判断をお願いします」
「なっ…この私になんと無礼な!」
ソフィアの余裕の表情にいら立ち手を振り上げようとしたが。
「無礼ななのはそっちだ」
ソフィアが殴られることはなかった。
その代わり光の魔法陣が浮かび上がり現れたのは――
「大賢者様!」
「侯爵閣下!」
騎士達や宮廷医師達は膝をつく。
実際にいるわけではなくホログラムのようなものだった。
「随分と好き勝手をしてくれたようだな」
「エリオル様!」
「今回の所業はしっかりと私の耳にも入っている。お茶会の始まりから私の妻に随分な真似をしてくれたようだな」
「なっ…まさか」
バーバラはこの時初めて知った。
罠を仕掛けたはずが罠を仕掛けられたのはバーバラの方だった事を知った。
「すべて仕組んだの!この私を…」
「私は貴女の要望に応えただけですわ」
しれっと言い放つソフィアは不敵に笑って返した。
「招待をされたから受けただけ」
「どの口を言うの!」
掴みかかるバーバラに騎士は間に入ろうとした時。
剣が飛んできたのだった。
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