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第二章
35攻防戦②
しおりを挟むお茶を飲みながらちらりとバーバラを見る。
唇を噛み締め、侍女を乗らんでいるのが解ったがあえて無視をした。
睨まれた侍女は他の令嬢の傍付きだというのが解る。
(顔色が悪いわね)
他人事のように思うソフィアだが、自業自得だと思った。
ソフィアは聖女のような性格をしていない。
慈悲の心を持って接する時は使い分けていた。
…というか、これまで散々な嫌がらせを受けても耐えていただけ優しい方だ。
本当は今日のお茶会でも情けをかけてある程度は我慢するつもりだったが、ソフィアを怒らせてしまったのだ。
何故なら薬草を取り扱う者としてのプロ意識といった所だ。
紅茶に含まれている薬草は少量であれば死ぬことはないが、大量に摂取すれば猛毒になる。
その効果を知っていて、お茶会に使う行為が許せなかった。
同じく薬草を使う者として薬ではなく毒に使う行為は許すわけにいかなかった。
しかもお茶会に使うことにまったく躊躇もしなかった事から常習犯だと言うことが解る。
(お仕置きが必要だわ)
ぶるぶる震えているバーバラに関しては勿論だが、薬草を扱う者の責任感の無さが許せない。
(もし私が解毒剤を飲んでなかったらどうする気だったのか)
最初の一杯に飲む前に入れた甘味料とミルクは解毒剤以上の効果がある。
もし飲んでいなかったらどうしていたか。
もし持病を持っていたら。
死ななくとも大変なことになっていたというのに。
王族暗殺未遂事件に発展したらと考えない浅はかは許されないのだから。
「どうなさいましたの?」
「えっ…」
「顔色が悪いようですわね。そこの貴女も一杯どうかしら?」
侍女に声をかけソフィアは他のティーカップに注がれたお茶を差し出す。
「いえ…」
「遠慮なさらないで?貴女のご主人様の家の特産物でしょう?」
「それは…」
断れない言い回しをする。
万一ここで断れば角が立つだけで済まないのだから。
「それとも、こちらのお茶が飲めなかったかしら?」
「我が侯爵家の特産物を侮辱なさる気!」
「言葉が過ぎますわよ。このお茶は最高級でしてよ」
「そんなつもりはありませんわ。ただお飲みにならないのはどうしてかと…飲めない理由があるのかしら?」
令嬢達は口々にソフィアを責めるも、お茶を飲めない理由を尋ねると口ごもる。
そして僅かな沈黙ののち。
「飲みなさい」
バーバラが侍女に命じたのだった。
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