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第二章
28嘆きの侍女⑧
しおりを挟む二週間後、王宮にて。
「は?」
公爵家を追放されてしまった若い侍女が以前よりも小奇麗な装いで女官見習いとして働いているのを目撃された。
(何でよ!)
女官は侍女以上に狭き門だ。
侍女は身分がなくとも適正試験を受ければならない。
女官に至っては身元もはっきりしていなくてはならないし、後見人に推薦者も必要になる。
二人の侍女が試験を受けるまで色々必要なものがあるのに、コネクションがあるとも思えない。
「どうして…」
「あの後、ソフィア姫様が侍女長様と女官長様に掛け合ってくださったんです」
「私達はなんてことを…これほどの慈悲深い方に酷い事をしてしまいましたが、これからは生まれ変わります」
罪の意識は消えない。
それでも生かされたのだから死ぬ気で頑張ろうと心を入れ替えた二人。
元より命令され、脅される形でソフィアに嫌がらせをしていたので根はまっすぐだった。
「嘘でしょ…そんな!」
その場にいたくなくて逃げるように去る中、庭園に逃げ込むと先約がいた。
「良かったわ」
「まったくお前という子は」
庭園にはローゼマリーとソフィアがお茶をしていた。
「罪を犯しても悔い改めているのですから、ちゃんと見極めるべきです」
「まぁ、他に嫌がらせをした侍女とことなり潔かったしな。謹慎期間も嫌がらせをしたのが不思議なぐらいだ」
「痛々しい程でした」
柱に隠れて二人の話に聞くも、親指の爪を噛み、睨む。
(何が情けよ!何が慈悲よ!綺麗ごとを!)
奈落の底に叩き落とされるはずの二人は以前よりも特別待遇だった。
本来ならばありえないのだが、ソフィアが掛け合い許されたのだ。
(王女気取りで情けをかけてさぞ気持ちいいのでしょうね!)
清廉潔白なのを見せつけられた気分だった。
(お膳立てされた地位で守られて何の苦労もしないで…誰の所為で!)
ソフィアへの怒りが募っていく。
これまでは気に入らない外国の姫程度から不愉快な存在に変わったが、今は憎悪の対象だった。
(憎い、憎い、憎い!)
何もかもが違う存在。
綺麗なままでいられるソフィアが憎くてししょうがなかった。
なんとかしてあの笑顔を壊してやりたい。
あの笑顔を絶望に変えてやりたい。
この瞬間、悪魔に魂を売った侍女はソフィアを陥れることを決めたのだった。
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