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第二章
27嘆きの侍女⑦
しおりを挟む今一番合いたくない人物が現れひっそりと舌打ちをした。
しかしソフィアは気づくことなく震える侍女二人に近づく。
「どうしましたの?」
「ソフィア様、近づいては…」
「顔色が悪いわ。体調でも悪いのかしら」
無防備すぎるだろうと思った。
つい最近まで散々嫌がらせをした侍女二人に近づくなんて正気の沙汰ではない。
(馬鹿なのかしら?いや馬鹿だわ!)
傍にはバーバラもいる。
無防備に近づけば何をされるか解らないのか、それとも何も考えていないのかと侍女は思う。
その予測は当たる。
「何でもありませんわ。勝手に…」
「大丈夫ですか?」
「ちょっと!」
バーバラが馬鹿にするもソフィアは無視をして侍女二人に近づきハンカチを差し出す。
「吐きたいのね…少し外に行きましょう」
「ソフィア様…」
「病人を放っておけません。いいですね」
有無を言わせな口調に傍付きの侍女は諦めた表情をしながら従った。
「王女殿下、私は…」
「このままでは行けませんわ。さぁ参りましょう」
「ちょっと!何を勝手な事をしているのよ!私の侍女よ!」
場所を弁えずにバーバラは大声を出す。
その声にない事かと人が集まるも追い詰められた侍女二人は告白をした。
「私は貴女様に優しくしていただく資格はありません」
「これまでの嫌がらせの数々は私達がいたしました」
バーバラに命令されたと言わなかったのは侍女達にもプライドがあったからだ。
ここで主人の命令で仕方なくしたと言えば侍女としてのプライドも捨てる事になる。
最低な事をした自覚はある。
許されないと思っていても、侍女としての誇りだけは捨てられなかった。
「私達は王家に不敬を…」
「死刑になっても当然です」
ここは王宮内だ。
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「そうですか。では彼女達の処遇はお任せいただいてもいいと?」
「お好きに。煮るなり焼くなり好きに」
きっぱり言い放ったバーバラ。
そのそばで見ていた侍女は最後まで冷めた目で見ていた。
これであの二人は終わったと思ったのだった。
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