82 / 117
第二章
25嘆きの侍女④
しおりを挟む意固地になった事で外では演技を続けた。
どんなに辛くとも、公爵家の侍女であることはステータスであることは変わりない。
同期には自慢していたので今更言えないのだ。
義姉が亡くなり数年、自分こそが公爵令嬢だと偉そうにするバーバラを内心で馬鹿にしながらも侍女の仕事を続ける最中、魔王軍の討伐に出向いていた勇者一行。
その彼らが帰って来た。
特に国民から英雄と称えられているのは大賢者の称号を得たエリオルだった。
「私を迎えに来てくださったのね!」
王宮に帰国した後に噂が流れた。
元は隣国出身であるが、実は侯爵家の人間だとか。
当初隣国の格下の貴族だと馬鹿にしていたのにバーバラは手のひらを返した。
なのだが――。
「あの女!絶対許せない!」
事態は思わぬ事態となるのだった。
栄養となった後にエリオルは隣国に招かれ数日を過ごしや後に帰国したのだが、その隣には一人の少女がいた。
聞けば隣国の貴族令嬢を婚約者に選び国に連れ帰ったのだから。
「どうして私ではないのよ!あんな何も持っていない女が!」
ヒステリックに叫ぶバーバラを冷めた目で見る。
だけど侍女もいら立っていた。
(何故あんな女が!)
バーバラが気の毒だから不快に思ったわけではない。
侍女もエリオルの婚約者の座を狙っていたのだから。
なのにぽっとでの女がちゃっかり婚約者の座に収まったのが気に入らなかった。
だからバーバラが下っ端侍女に命じて散々嫌がらせをしたことを知っていたが、何もしなかった。
むしろいい気味だと思った。
下級貴族の分際で大賢者の婚約者になるなんて許せないと思った。
なのだが…
「何で平然としているのよ!ちゃんと嫌がらせの細工をしたんでしょうね!」
「はい!しました…ですが」
「寝所に毛虫を放ったり、ドレスを破いても平然とされていて」
ソフィアはどんな嫌がらせも屈しなかった。
怒りを露わにすることもなかったので、嫌がらせをする側が精神的に疲れていた。
その理由は…
「次上手くいかなかったら許さないわよ!」
「はい…」
バーバラに毎日のように怒鳴り散らされ、嫌がらせをするにも気力がすり減るのだから。
罪悪感もあるので心が痛いのだ。
「もうこんなこと耐えられないわ」
「そうよ。王宮でソフィア姫様は私に挨拶をしてくださったのよ」
クレミア公爵家に仕える侍女は主に顔すら覚えられていない。
名前で呼ばれることもほとんどなく人間以下の扱いを受けているのに対してソフィアは彼女達の顔をちゃんと覚えていたのだった。
それだけでなく優しく笑いかけて気遣ってくれるのだ。
そんな相手にこれ以上嫌がらせをするのは辛いと話していたのだった。
123
お気に入りに追加
5,223
あなたにおすすめの小説
離婚した彼女は死ぬことにした
まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。
-----------------
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
-----------------
とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。
まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。
書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。
作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。
下げ渡された婚約者
相生紗季
ファンタジー
マグナリード王家第三王子のアルフレッドは、優秀な兄と姉のおかげで、政務に干渉することなく気ままに過ごしていた。
しかしある日、第一王子である兄が言った。
「ルイーザとの婚約を破棄する」
愛する人を見つけた兄は、政治のために決められた許嫁との婚約を破棄したいらしい。
「あのルイーザが受け入れたのか?」
「代わりの婿を用意するならという条件付きで」
「代わり?」
「お前だ、アルフレッド!」
おさがりの婚約者なんて聞いてない!
しかもルイーザは誰もが畏れる冷酷な侯爵令嬢。
アルフレッドが怯えながらもルイーザのもとへと訪ねると、彼女は氷のような瞳から――涙をこぼした。
「あいつは、僕たちのことなんかどうでもいいんだ」
「ふたりで見返そう――あいつから王位を奪うんだ」
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。
火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。
王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。
そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。
エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。
それがこの国の終わりの始まりだった。

そのご令嬢、婚約破棄されました。
玉響なつめ
恋愛
学校内で呼び出されたアルシャンティ・バーナード侯爵令嬢は婚約者の姿を見て「きたな」と思った。
婚約者であるレオナルド・ディルファはただ頭を下げ、「すまない」といった。
その傍らには見るも愛らしい男爵令嬢の姿がある。
よくある婚約破棄の、一幕。
※小説家になろう にも掲載しています。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

忌むべき番
藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」
メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。
彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。
※ 8/4 誤字修正しました。
※ なろうにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる