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第二章
23嘆きの侍女②
しおりを挟む侍女は野心家だった。
出世はしたいしいずれ、高位貴族の妻になり王宮で優雅に暮らすロイヤルファミリーの仲間入りをすることを夢見ていた。
姉は平凡で容姿もそこそこだった。
従順で両親の言うことを素直に聞き、夫に尽くすような欲のない人物だ。
侍女はそんな姉を見下しくだらないと思っていた。
凡庸な夫に仕えるなんてありえない。
だからこそ自分はもっと上に行くと決めていた。
自信があったし、公爵家の侍女になれば行く行くは公爵夫人の座につけるのでは?と考えていた。
実際、貴族社会では愛のない政略結婚が当たり前だ。
ならばと期待を膨らませ、同期達にも当初は羨ましがられた程だったが、実際は違う。
「今日から私の言うことは何でも聞くのよ。アンタは私の召使なんだから!」
顔合わせからないなと思った。
まず初めに美的センスなんてあったものではない。
しかも一番耳を疑ったのは所作に言葉遣いだ。
今でこそましになったが当初は使用人をお前とかアンタと呼んでいた。
母親に関しては。
「ママ、もう少しましなのないの?これ」
(ありえない…)
貴族ならば母親をママと呼ぶのは幼少期までだ。
10歳を迎えた令嬢ですら母様と呼んでいるのにバーバラは敬語もちゃんと使えているか怪しい。
教養なんてないに等しかった。
元は男爵令嬢だと聞いても、必要最低限の淑女教育もできていないなんてありえないと思った。
普段から我儘放題で、多忙の義父は邸にいることは少ない。
なのにバーバラの素行の悪さは侍女の責任にされ、母親も同様だった。
無理難題を押し付けられ、社交界でも素行の悪さは有名だった。
常にストレスの日々で、それでも耐え忍んだのは公爵家の侍女というブランドだった。
当初はまだ公爵家の財産を握っていなかった。
何故なら前妻が亡くなって一年少しで、しかもバーバラには血のつながらない姉がいた。
前公爵夫人と公爵との間に生まれた公爵令嬢が生きていたからだ。
通常、実子が生きている状態ならば財産を引き継ぐのは難しく。
公爵の地位を継承できるのは実子となっているのだから。
だけど運悪く実子であるバーバラの義姉は不幸にも王宮内のお茶会で毒殺され亡くなったのだ。
その為跡継ぎはバーバラとなったのだが…
(恐ろしい女…義姉を毒殺するなんて)
侍女は確信があった。
邪魔な義姉を始末したのは誰か。
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