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第二章
19聖女と悪女
しおりを挟む王宮で好き放題をするバーバラはソフィアに対して高圧的な態度に出ることで噂になっていた。
「あら?なんて地味な装いでしょう。気づきませんでしたわ」
「本当に…」
王宮内でばったり会っても道を譲ろうともしないバーバラの態度は目に余るものがある。
傍にいる侍女が咎めようとするもソフィアが制止する。
社交界では感情的になった方が負けだ。
「それは失礼いたしました。元より私は地味な顔立ちですので」
「本当に…」
「先を急ぎますので失礼しますわ。行きますよ」
「姫様!」
さして気にすることもなく去って行く姿にバーバラはイラついた。
「流石ね、ソフィア王女殿下」
「余裕ね…それに比べて」
「ええ、バーバラ様は…ねぇ?」
一部始終見ていた貴族令嬢達はヒソヒソと話す。
明らかに大人の対応をして余裕を見せるソフィアにいら立つバーバラはまるで子供だった。
どんなにこれ見よがしに嫌味を言っても、存在を無視してもソフィアは感情的になることなく許していることから周りは聖女のように慈悲深く懐が大きいと評価する。
その一方で陰湿な嫌がらせで夜会でワイングラスをわざと傾けてソフィアのドレスを汚す行為をするバーバラに悪女と囁く者が増えていた。
「ねぇ、聞きまして」
「ええ、バーバラ様がソフィア姫に嫌がらせをしているとか」
「明らかにやり過ぎではなくて…」
「なのに寛大なお心でお許しになるソフィア様は聖女様のようね」
バーバラが嫌がらせをして嫌味を言っても微笑んで許すソフィアを見る者達は聖女のようだと言う。
その一方でバーバラは悪女のようだと言う。
実際バーバラの母親は社交界でも悪い噂が多く。
前妻を押しのけて今の地位にいるのだから。
「何でよ!」
邸内で暴れまわるバーバラは王宮内の噂にいら立ち。
そして昨日、自分の侍女の一人に命じてソフィアに嫌がらせをしていたことがばれてしまい王宮から追放されてしまった。
「侍女から私に足がついていないはずよ…あくまで侍女の独断ということにしたし」
ぶつぶつと独り言を言うバーバラを侍女達は遠巻きに見られていることにも気づかない中。
「もう、限界だわ」
「いつか、お嬢様の殺されるのではない?」
「その前に…」
理不尽な命令でソフィアに嫌がらせを命じられた侍女は、王宮のみならず王都にいることもできなくなり、将来は断たれてしまった。
これ以上バーバラに仕えていたら自分達も同じような目に合うのでは?と考える侍女達は、不安を抱いていたのだった。
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