聖女な義妹に恋する婚約者の為に身を引いたら大賢者の花嫁になりました。今更婚約破棄を破棄にはできません！

第二章

17憎悪

強制送還されたバーバラは邸内で荒れに荒れていた。


王族を侮辱したことにより謹慎を命じられた。
当初は納得しなかったが、公爵である義父にも咎められたのだ。


反省何てするはずもなく、八つ当たりをされるのは侍女達だった。

「何なの！このお茶は！」

「申し訳ありません」


憂さ晴らしに侍女の仕事に文句をつけていた。
侍女は怯えながら頭を下げるよりほかなかったのだが、バーバラはティーカップを投げる。


「お茶も満足に淹れられないの！」

「ですか、本日は…」

「言い訳するんじゃないわよ！」

「きゃああ！」

頭を掴み床に叩きつける所業はまるで悪魔のようだった。
周りの侍女達も遠巻きに見ていた。



ここでバーバラの怒りを買えば自分だけでなく家族まで巻き込まれる。
公爵家の力を使ってやりたい放題をしているバーバラだが、既に使用人の心は離れている。


「どうして私がこんな目に合わないといけないのよ！」


部屋で暴れまわるバーバラは鏡に向かって怒鳴りつける。

「あの場で私を無理やり転移させるなんて」


美しく着飾って違いを見せてやろうと思った。
皆が見ている中、どちらが大賢者の妻に相応しいか見せつけるつもりだった。

なのに、見向きもされなかった。
しかも王族を侮辱した事で謹慎を命じられてしまった。


「こんなこと許せない！」


冷めたような目と、他の貴族もバーバラを軽蔑するのような目を向けていた。


このままで済ませるものですか！


「あんな女がエリオル様の隣に立つなんて許せない！」



邪魔者さえいなくなれば見てくれる。


エリオルの婚約者になるのは自分だと信じて疑わなかったバーバラはソフィアに憎しみをぶつけた。




「私を怒らせたのだ事を後悔させてやるわ」



この日からだった。
ソフィアに対する嫌がらせが始まったのは。





「きゃああ！」

「何ですの！」



ソフィアの傍付き侍女が悲鳴を上げる。
傍にはネズミがうろついていたのだ。


「姫様のドレスが…」

「誰がこんな真似を！」


部屋が荒らされ、ドレスが引き裂かれる等と地味な嫌がらせが続いていた。


「あの女、自分が何をしているのか理解してないな」

「情けをかけたというのに…」


ある程度想定はしていたが、こんな子供のような嫌がらせをするなんて思わなかったのだ。


しかも自分の手は汚さずにいるのだからやり方が汚すぎると思ったが、嫌がらせを受けてるソフィアは平然としている所為で余計に神経を逆撫ですることになるのだった。