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第二章
3王家の血
しおりを挟む王族と言っても形は様々だった。
フリーレン王国の初代国王は平民だった。
国の創始者のすべてが貴族だということはないのだが、初代国王は平民で騎士だった。
建国以降も国王としての生活よりも平民としての生活を好んだ。
一国の君主になっても戦争が始まれば自ら戦場に向かうような人物で。
とにかく脳筋だと聞かされていた。
その血筋を王家はしっかり引継いでいるので、どうしても頭脳戦は向かないのだ。
なのでこの二人も。
「このたわけが!」
「何を!」
王宮の庭園で剣を振り回す二人。
その所為で美しい庭園は炎の渦だった。
「お前達!あの馬鹿親子…じゃなくて陛下と王女殿下を止めぬか!」
「しかし団長!そんなことをすれば全滅します」
「気絶させればよい!」
(いいのか…)
騎士団の指揮者らしき男が一斉に部下に命じるが、相手は国のトップなのにいいのかと思う。
「あの馬鹿親子が」
「こうなったら無理だろ」
「だったらお前が行けよ勇者」
「無理を言うな!」
あらかじめ予測できたと思いながらも頭を抱えるエリオットに対して他の面々も諦めモードだ。
いかに勇者であろうともあの中に入って止めるなんて芸当は無理だと告げる。
「馬鹿であるが、あの二人の戦闘能力は恐ろしい。特に動きが」
「動きさえ止められたら俺の束縛魔法でなんとかなるのだが」
「動き?」
ルクスの魔法はどれも呪文を唱えなくてはならない。
その為発動までに時間がかかるのだ。
「動きを一瞬だけ止めるのは可能だけど」
「「「何ぃぃ!」」」
ソフィアの言葉に誰もが驚く。
「姫君!本当に可能なのですか!」
「あの暴れ馬を止められるのですか!」
「はっ…はい」
酷い言われようだった。
仮にも一国の王と王女にこんな扱いが許されるのかと思ったが。
「フリーレン王国は自由だ」
「もう何も言うまい」
国の常識は一つじゃないと学んだ。
「どうするんだ?」
「お二人共興奮状態なので薬草で…」
手荷物の中にある小瓶を取り出す。
「これはどんな巨大な魔物も一瞬だけ眠らせます。少し怯ませるだけなら霧吹きで…」
「その必要はない」
「あああ!」
ルクスは瓶を奪い紐で巻き付ける。
そして何故かブンブンと振り回す。
「何をしているの?バターでも作る気!」
「んなわけあるか!」
力の限り振り回し小瓶の蓋が外れ、二人に中の薬がかかってしまう。
「ちょっと!そんな沢山かけたら死んでしまうわ!」
対魔物用に作った薬だ。
人間には毒にもなるのだったが…
「何この水?」
「眠気が…」
巨大な魔物ですら怯むのに、二人は少し倦怠感を感じる程度だった。
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