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第一章
39隣国への準備
しおりを挟む茶番劇が終わり、隣国に嫁ぐことが決まったソフィアは大忙しだった。
通常なら婚約期間を設けるのだが、二人の王女の奔走によるものだ。
「ほぼ脅迫だったがな」
「でも、他の貴族を抑えてくださって助かったわ」
「…反対貴族はあの馬鹿一家のおかげである程度は潰せたからな」
ヘリオスを中心に聖女の取り巻きになり下がった男達は貴族派と貴族派よりが多かった。
「まさかこれを狙っていたとはな」
「結果オーライなのでしょうか」
聖女に現を抜かし、婚約者を粗末に扱ったことは噂になり、政略結婚に関して見直しがされるだろう。
これまで男尊女卑が当たり前で。
女性が当主になる事は論外だと前時代的な事を言っていた貴族は糾弾されるだろう。
男だから優秀だということはないのだから。
「この国の王位継承者は女性だ。女性を蔑む行為は後の女王陛下を否定する事だからな」
「ええ、メティス様ならばきっと」
男尊女卑を変えてくれる。
ソフィアはそう信じていたがエリオルの考えは別にある。
(行き過ぎて女尊男卑にならないといいがな)
エリオルは心の底から願った。
ローゼマリーとメティスは恐ろしい程に似た考えを持っているからだ。
「明日にはこの国を出ることになる。心の準備は大丈夫か?」
「今更嫌だとでも?」
「嫌だと言っても連れて行くさ」
ソフィアを抱きしめながらそっと耳打ちする。
ここまで来るのにどれだけの年月を有したかと思い出す。
(もうこれ以上は待てない)
祖国を出て隣国に留学して死に物狂いで頑張った。
血を吐くような日々も耐えられたのはソフィアを迎えに行く為だ。
ようやく願いが叶ったのだから。
「不安がないっていえば噓になるなるわ」
「ソフィー」
「私は伯爵令嬢でしかないのよ」
今後は高位貴族の仲間入りをして、侯爵夫人となるだけではない。
大賢者の妻として振舞わなくてはならないのだから不安を抱いても仕方ない。
「俺は侯爵の爵位を賜っているが、基本は聖職者の仕事をしている程度だ」
「そう…なの?」
「領地経営はしているが、君が想像しているようなものじゃない。社交界にも必要最低限しか顔を出していない」
「それはそれでいいの?」
「魔女の巣窟は苦痛なんだ」
遠い目をするエリオルにソフィアはこれ以上追求するこちとはなかった。
何所の国も社交界は似たようなものである。
好機族でしかも独身であれば群がるのは簡単に想像できたからだ。
(なんだか少し嫌だわ)
幼い頃は自慢の幼馴染だったが今では女性に好かれていることが嫌だと思うのだった。
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