聖女な義妹に恋する婚約者の為に身を引いたら大賢者の花嫁になりました。今更婚約破棄を破棄にはできません!

ユウ

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第一章

37逃げ場無し

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これぞ公開処刑だった。
すべてはお膳立てされたようなものだった。


(何で…こんなことに!)


クロウリーとの決別を宣言してしまった二人はもう頼る人間はいない。
公の場で隣国の王女殿下に対して暴言を放ち、元婚約者であるソフィアに傲慢な態度を取ったのに智に逆キレしてテレサを悪女呼ばわりしてしまったことで助けてくれる人はいない。


それどころか敵が増えた状態だ。


「処遇は爵位剥奪、領地没収の後に、二人は平民となる」

「お待ちください。では私達は…」


「放り出されるのですか!」


何もかも奪われどうやって生きていくのか。
恐ろしくなるが、自分からクロウリーとの縁を切ったので今更頼ることはできない。


「そうそういい忘れてましたな」


そこに追い打ちをかけるように宰相が誓約書を読み上げる。


「婚約破棄の慰謝料に関してはクロウリー殿が支払われておりますが、婚約の際に援助を受けている資金はすべて返金するまで借金を返済してもらうことになる」

「は?」

「何よそれ!」

当然のことながら婚約してからソフィアの名前で借金をしたことは何度もある。
援助も求めていたのだからそのお金は当然返金を要求するのは当然だ。


だが、すべてを奪われて支払えるわけがない。

「兄上!頼む」

「そうです。代わりに…」

クロウリーに頼ろうとするも。


「エスリード家とは縁を切っているクロウリー殿には支払い義務はありません。他人ですからな」

「そんな…」

「じゃあ私達はこれからどうやって生きて行けばいいの!」


誰かに頼る事しかしてこなかった彼らは自分でどうにかする気はまったくなかった。


「そんなのご自分で考えればいいでしょう?まぁ働けばいいだけでしょ」

「そんなの…」


嫌だと頭を横に振る姿は駄々っ子のようだった。


お金のない暮らしなんて耐えられない。
ヘリオスはなんとかしてこの事態を打開しなくてはと思いながらソフィアを見るも。

視線が合っても逸らされる。


(この俺を何故助けないんだ!何故…)

この期に及んでソフィアに助けを求めていたのだが、痺れを切らせたメティスが声高らかに告げた。


「もう結構。これ以上は無駄です」

「何を…」

「強制退場を!警備隊!」


反省もしない。
罰を受けても嫌がるばかりの彼らをこの場から摘まみだすように命じたのだった。


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