聖女な義妹に恋する婚約者の為に身を引いたら大賢者の花嫁になりました。今更婚約破棄を破棄にはできません!

ユウ

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第一章

32違和感の正体

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「ふざけけるなぁぁ!」


罵倒を浴びせるリグルは公衆の面前の前だというのに醜態を晒した。
普段から感情的だったが場所を弁えていたのだが、それほどに屈辱的だったのだ。


一方ソフィアはずっと違和感を感じていた答えが解った。


「お父様、エステード夫人とお母様は過去にトラブルがあったのですか」

「正確には一方的に妻に劣等感を抱き暴走しただけだ」

「暴走…」

詳しくは聞かされていない。
聞かせる内容ではないとカディシュは思っていた。

「だけど、どうしてその方のご子息と…」

「姑に問題があれど、当人同士がしっかりしていれば問題ないと無理やり説き伏せられたんだ。貴族派の狸親父にな」

「狸…」

「だがその道婚約破棄をするんだ。ならば踊ってもらった方がいい」

絶句した。
ここまで策略的な事を考えていたなんて。

「最初からそのつもりだったのですか…侯爵」

「私は賭けたんだ」


幼少期から二人は思いあっているのを知っていた。
しかし今のままでは本当の意味で一緒に生きるのは難しい。

王家を納得させるものがない。
しかも一部の貴族から良く思われていない故に、ソフィアを利用して失脚を狙う貴族もいるのだ。

すべてを潰して守ることは難しい。
ならばエリオルが相応の男になればと思っていた。

「私が思うよりもあの女は手段を選ばなかった。故に私はできるだけお前に目立つ格好をさせなかった」

「それで・・」

普段から質素なドレスが多かった。
派手な化粧も禁じていたがそこには理由があった。


「あの男、幼少期はまだましだった…だが思い上がり、やりたい放題を始めた時点で婚約を白紙にしようと思ったんだ。私も領地と爵位を返上しても良いと」

「そんな…お父様」

「そのタイミングでエリオルが帰国した。だから私はエリオルに条件を突きつけた」

「私は何も知りませんでした」


一時はカディシュを恨んだこともあった。
親の心子知らずとはよく言ったもので、恨まれてもカディシュは娘の幸福を一番に考えていた。


「ただ、私は領民の生活を守る責任は放棄できなかったからな」

「知ってますよ」

「エリオル?」

「領民は気づいていたはずです。でなければ…」

カディシュが領地を引き継いで二十年。
その間様々な苦労をしながらも領民と絆を結んできた。

彼らはカディシュが十分すぎる程役目を果たしていることを理解しているのだから。


「私の後を継いでくれる後継者は見つけてある。万一の時は私一人ですべてを背負うつもりだった」


愛する妻の形見である娘の幸福の為ならすべてを捨てる覚悟をしていたのだから。
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