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第一章
22憎しみの始まり
しおりを挟む社交界でもぱっとしないナタリーから婚約者を奪い自分が侯爵夫人になってやろうと思った。
下級貴族令嬢は高位貴族の愛人として成り上がることも多かったが、リグルはそんな惨めな思いはしたくない。
最初から侯爵夫人となり、優雅に暮らすことを夢見ていた。
だから奪ってやろうと思った。
自慢の色気を使って社交界では二人の関係を流した。
浮気を匂わすようなことを言って、部屋には二人が肉体関係のある証拠を残して社交界ではエスコートされないように裏工作をした。
その結果、リグルの目論見通りになったように思えた。
しかしナタリーの元婚約者は勘当されてしまった。
侯爵家の令息であっても妾腹、しかも娼婦の生んだ息子で正式な侯爵家の息子として認められていなかった。
しかも侯爵家にいられるのは学校に在学している間だけ。
卒業と同時に侯爵家から追い出され、わずかなお金だけしか持たされないと聞かされた。
真実を知った時は遅かった。
リグルは婚約者がいたのだが、元からそりが合わず今回の事で婚約を白紙にされてしまった。
勿論リグルの父親は大激怒だったが、既に社交界で噂が流れて手遅れだった。
そんな時だった。
とある貴族の令息が功績をあげ、爵位を賜ることになった。
聞けばその貴族は元商業ギルドで働き、男爵家の次男でありながらも経営学を学び独自の方法で新薬を開発した。
その新薬である領地を救ったのだがその領地の城主が辺境伯爵家が評価し王家に進言したのだ。
当時王家と対立関係にあったのだが、その貴族が間に入る事で仲は緩和された。
王妃はその貴族に爵位をを与えるように説得したのだ。
その貴族は男爵家の次男だった。
名をカディシュ・ステンシアだった。
伯爵位を得た後にクラエス領を得たカディシュは約束通りナタリーを迎えに行き、妻に迎えることが許され、一時期二人の純愛物語は社交界でも噂になった。
対するリグルは…
伯爵家の次男と婚約を結ぶことになった。
当時は貧しく生活も苦しいエスリード家を仕切っていたのは長男のクロウリーだった。
次男のハリソンは補佐的立場に当たり、爵位はあるものの、兄に頭が上がらなかったのだ。
リグルは傷物令嬢というレッテルを貼られたので、肩身の狭い思いをしながら暮らしている中、ハリソンは早々に愛人を作って遊んでいた。
所詮貴族の婚姻は政略結婚だ。
愛などないと思っていたが、社交界でも変わり者と言われるカディシュとナタリーは他国では今どき珍しいほどの仲睦まじい夫婦だともてはやされた。
貴族として道徳がないといいか聞かせながらもリグルの心はどす黒くなる一方だった。
そんな折、リグルに吉報が舞い込んだ。
クラエス家の不幸だった。
そこからリグルの復讐が始まったのだ。
数年後、クラエス伯爵家の息女ソフィアとの婚約話が出た。
当初、反対する声も大きかったが婚約は纏まった。
この時リグルはナタリーにうり二つのソフィアを使って復讐を企てた。
案の定、母親という存在を知らないソフィアは従順だった。
ただし表向きには良い姑として振舞いながらも、男の遊び癖を許してこそ妻だと教えたのだ。
その所為で委縮するソフィアを見て気持ちがよく、行動はエスカレートした。
その後に聖女が選ばれ世話係はすべてソフィアに丸投げをして責任はすべて押し付けた。
後にヘリオスがテレサに好意を持つようになり好機だと思った。
ソフィアを傀儡にして伯爵家の財産を奪い、そして聖女の母となり権力を手に入れようと思っていた。
自分は勝ち組だと高笑いをしていたのだが、その計画は狂ってしまったのだった。
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