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第一章
23幸福な時間
しおりを挟む同盟の話し合いはまとまり、婚約解消の手続きはほとんど終わった。
通常ならばもう少し時間がかかるのだが、宰相をはじめとする大臣達が走り回った結果だった。
国際問題が発生するならば政治を担う側の人間からすればある程度強引な手を使うのだ。
今回はヘリオスが理不尽な真似を行いソフィアを虐げ搾取し続けたことも前出しにして、ヘリオスを初めとしたエスリード家を悪人にしてソフィアを哀れで可哀想な令嬢という役にしたおかけでスムーズに事が運んだ。
後は公の場で発表するだけなのだが…
二人のすべきことはほとんどなく、今は薔薇園でお茶を飲んでいた。
「あの…エリオル」
「何だ」
「いや…」
お茶を飲んでいたのだが、後ろから抱き着かれるソフィアは困っていた。
「くっつきすぎではなくて?ここをどこだと」
「問題ない。外からは見えない。君とここでキスをしようと何をしてもな」
「そういう問題じゃないわ!」
耐え切れなくなりエリオルの腕の中から逃げようとするもそう簡単にいかない。
「酷いじゃないか。俺は頑張ったんだ」
「それは…」
「だったら少しの間ぐらいいいだろ?どうせフリーレン王国に帰れば邪魔な虫がついてくる」
「邪魔な虫…」
「ああ、最も邪魔な虫だ。名をローゼマリー」
「ちょっと!」
仮にも一国の王女に無礼である。
不敬罪に値するのだが、エリオルは立場上許される。
「一応親族に当たるからな。新婚生活は絶対に邪魔しに来るぞ。夕食食べに来たぞ‥なんて言って」
「そんな田舎の近所付き合いじゃないんだから」
「甘い。あいつはそういう女だ」
ソフィアを抱きしめる手を強めながら苦悩する。
「王都に離れた場所に邸を構えたかったんだがクソ爺の邸を壊すの難しいからな」
「クソって…」
「俺と母からすればクソだよ」
家族関係は詳しく知らないソフィアは何とも言えなかったが心配になり振り返ろうとしたが、甘かった。
「ちょっと!」
「まだまだ甘いな」
振り返った瞬間唇を奪われたあげく。
「貴方今!」
「フッ…」
口を押えながらわなわな震える。
(口の中に何か入ったわ!)
俗にいうディープキス。
まあまだ純情可憐な乙女にはハードルが高すぎた。
「エリオス…何で迫ってくるの」
「もう一回」
「そっ…そんな」
初恋の人に再会したが、恋愛に奥手なソフィアには刺激が厳しい事でいっぱいだ。
何故ならソフィアはヘリオスと手を握ったこともキスをしたことも一度もなく婚約者どころか召使の扱いだったのだから。
こんな風に甘い空気になる事など皆無だった。
「ソフィー愛している」
「エリオル…私も」
戸惑いながらもソフィアはエリオスの言葉に答えるように身を預けた。
ようやく二人は心を重ねることが叶ったのだ。
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