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第一章
21憎しみに染まる悪女
しおりを挟む噂が噂を呼び婚約を見直す事件が勃発し、中でも一番困っているのは宮廷貴族だった。
領地持ちの貴族はこれまで貧しい生活の中、中央の為の己の身を犠牲にして国を王都を守ってきたのにこのありさまでは辺境伯爵家の怒りは相当なものだった。
聖女の取り巻きは起爆剤に過ぎない。
これまでやりたい放題をしていた彼らに我慢ができなかったのだ。
しかし、人は卑怯な生き物である。
自分の責任を逃れる為に生贄が必要だと考え、矢面に立たされているある人物をつるし上げようとしていた。
それがエスリード家だった。
「一体いつになったらテレサは戻ってくるの!」
「聖女さえ我が家に戻ればなんとかできるはずだ」
エスリード夫妻はこの危機的状況をなんとか打開するためにも一日も早くテレサを呼び戻したかった。
「ソフィアに連絡は!」
「現在王女宮にて勇者御一行の世話を任されているそうだ」
「何であんな出来損ないが!きっと王女に泣きついたのよ…本当に母親に似て媚びを売るのは天才的ね」
今は亡きソフィアの母、ナタリーは決して身分は高くない子爵令嬢であった。
ヘリオスの母リグルはナタリーを見下していた。
アルフェッカ王国では金髪に碧眼が美女だと好まれる中。
ナタリーの容姿は異国の血を思わせるのだ。
リグルはナタリーを見下していた。
共に子爵家の令嬢で立場は変わらないの脅威となる家柄は潰せと親に教育されていた。
親の命じられるまま、リグルはナタリーを蹴落とそうとした。
慈善活動に精を出すナタリーを貴族の酔狂だと馬鹿にする者も多かったこともあり評価を下げるのは簡単だった。
だがナタリーは聡明だった。
他人の嫌がらせに屈しない強い女性で北の領地では癒しの聖女と呼ばれるまでの品管を手に入れ始めた。
常に戦場を出る騎士達を見守り時には自身も戦場に赴き、治療を行う姿はまさしく聖女だった。
その姿は宮廷貴族からすれば偽善者だと思われていた。
だからリグルは嫌がらせをして婚約者を誘惑したのだが、誤算が生じた。
その直後だ。
あろうことかナタリーは別の貴族に求婚をされたのだ。
それが後のソフィアの父、カディシュ・クラエスだった。
貧しい男爵家の子息でありながら優秀さを認められ王立学園にストレートで入学した後に華々しい功績を残した後に他国に留学したのだ。
ナタリーとは幼馴染と聞くが、二人は愛し合っていたがナタリーの父親が許さずある条件を突きつけたのだ。
その条件はまず無理なものだった。
しかし、カディシュはその条件をクリアし、大胆にも王宮のパーティーで求婚したのだ。
ずっと見下し虐めていた相手は自分よりもずっと素敵な求婚をされた。
その後二人の間に子供が生まれたと風のうわさで聞いた。
対するリグルは幸福とはいいがたい生活をしていた。
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「絶対に許せない…あの女の娘が幸せになるなんて!」
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