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第一章
18あの日の約束
しおりを挟む王女宮にもう一人の客人が現れた。
「王女殿下、ご配慮感謝いたします」
ソフィアの父、カディシュ・クラエスは内々に王女宮に呼ばれていた。
「クラエス伯爵…ご無沙汰しております」
「もう私は貴方よりも立場は下なのですが…」
頭を下げるエリオルに対して苦笑するカディシュだったがエリオルは頭を上げなかった。
「お約束通り、迎えに参りました」
「ああ、約束通り娘をそのまま差し上げます」
あの日約束をカディシュも覚えていた。
「タイミングとしては最高だったようですな」
「遅くなりました。本当ならば…」
「いいえ、遅くありません」
カディシュは望まない婚約を強いられた娘に申し訳なく思いながらも、間に合って良かったと思った。
「しかし舅に言われた言葉をそのまま言うことになるとはな」
「え?お祖父様?」
「私も身分故に妻との婚約を猛反対された」
両親は政略結婚だと思っていた。
しかし実はそうではなく恋愛結婚であることを聞かされた。
「私は男爵家の三男だった。妻は子爵令嬢。立場が違い過ぎた…故に舅に伯爵の地位を賜れたのなら娘をそっくりそのままくれてやると言われたんだ。当時は侯爵家の息子と縁談が決まっていた」
「まんま同じだな」
「ああ…すごいな」
ある意味同じ穴の貉だった。
カディシュは娘の恋を守りたかったがそれではだめだと思った。
「何かを得るには何かを捨てなくてはならない。そして戦う覚悟がなくてはな」
「お父様…私は何も知らなくて」
「恥ずかしくて言えないだろう」
娘の若いころの恥ずかしいエピソード何て聞かせたくなかったのが本音である。
今として甘酸っぱい記憶出る。
「外聞が悪いからな、。略奪婚故に」
「何を申されるか。欲しいものを力ずくで手に入れるとは」
「ローゼ…」
何所までも男らしいローゼマリーにルクスは頭が痛かった。
可愛げや可憐さは全く持ち合わさず男よりも凛々しく男前なのだ。
「娘をどうかお願いします」
「はい!」
互いに握手をしながら笑いあう。
かつて自分も同じような試練を乗り越えたのだからエリオルが本物ならば乗り越えてくれると思っていた。
「随分と無礼を申しました」
「どうか昔のように接していただけませんか」
「そうか…」
立場としてはエリオルが格上であるが、舅となるのだからへりくだった態度は止めて欲しいと告げたのだった。
「して、貴方を呼んだのはほかでもありません。最終調整をしたいのですが、よろしくて?」
「承知しております」
そろそろ最終処刑に向けてメティスは皆にシナリオを話すのだった。
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