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第一章
13婚約者達の報復②
しおりを挟むところ変わって学園のテラスにて。
ここでも同じくマーガレットと同じく、二人の男女が言いあう光景が広がっていた。
とは言え一方的に男が女性に縋り付いていた。
「待ってくれ、スカーレット!」
「しつこいですわね。愛する聖女様の元に行けばよろしいでしょう」
スカーレット・トレイル。
侯爵令嬢でありメティスの従妹に当たる人物だ。
スカーレットは聖女に夢中だった男の一人を婚約者に持ち、ずっと注意を乳母がしていた。
しかし婚約者はまるで耳を貸すことなく、聖女に嫉妬を抱くなんてみっともないと責められたのだ。
「だが…」
「侯爵家は私が継承することになりましたの」
「何だって!」
こちらもマーガレットと同じく、跡継ぎに恵まれなかったので婿を取ることが決まっていたのだ。
しかし聖女に夢中になり過ぎる姿を見てスカーレットの父親が難色を示したのだ。
「トレイル家は王家に忠誠を誓う騎士の家柄。あっちこっちフラフラする優柔不断な男には務まりませんわ」
「悪かった…もうこんなことは」
「戦場ではそんな言葉は通じませんわ」
必死に謝るもスカーレットはこれまで何度もチャンスを与えながら反省をすることがなかった婚約者に愛想をつかしたのだ。
「伴侶に関しては信頼のおける方を選びます。ですから聖女様と存分に愛し合ってください」
「スカーレット・・・ひぃ!」
「これ以上近づくならば首と胴体がバラバラになりますわよ」
愛用の剣で脅すスカーレットは内心で笑った。
(本当に情けない男)
聖女を守る騎士という立場に酔っていた婚約者はこれから騎士として生きていくことはできないだろう。
ヘリオスが見せしめになってくれたおかげでもあると思っていたが。
聖女に夢中になっている婚約者に報復してはどうかと助言してくれた人物がいたのだ。
「無事に婚約が白紙に戻って良かったですわね」
「「ありがとうございます王女殿下!」」
そう、二人に助言をしたのはメティスだった。
「私は浮気程度ならここまでする気はありませんでしたわ」
「私もです」
二人は政略結婚を覚悟していた。
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「当家のお金を使いこむような男は信用できません」
「あんな自制心のない男に家を任せるなんてできません」
二人は元婚約者に対する信用はゼロだった。
だからこそ婚約解消をした後に清算するつもりだった。
ただ婚約破棄ではなくあくまで円満な婚約解消に持ち込んだのには理由があるのだ。
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