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第一章
11身勝手な親子
しおりを挟む勝手に勘違いをしているヘリオスと母親。
クロウリーはもうダメだと思った。
それから数日過ぎても、ソフィアから連絡はなかった。
それどころかクラエス家から婚約破棄の正式な手紙が届き慰謝料請求とこれまで援助した資金の返上と共同経営をしていた事業の権利を返上するようとの書面が届く。
「どうしてだ!何故俺に詫びを入れないんだ」
「何様なのソフィア!」
謝罪の手紙が来ると思えば、ソフィアからの連絡はなく逆にソフィアの父親から今回の事は訴えるとまでいう始末だ。
普段から争いを好まない大人しい性格と思いきや、娘を傷つけたことは許せない。
婚約破棄の件は受け入れるということで、正式な手続きを取った後に慰謝料を請求するとのことだ。
「当然だろう。急いで弁護士に手続きを」
「そんな必要ありませんわ」
「そうです!何故!」
どうして解らないんだと思うクロウリーだが、話しても無駄だ思った。
「どうせ強がっているだけだ!本心では俺を愛しているはずだ」
「そうよ。調子に乗らせてはダメよ」
二人は似たもの親子だった。
無駄に自分に自信があって自分のすることに間違いないと思っている
それこそが勘違いであるのに。
「そうだわ、テレサはどうしたの?」
「テレサは王宮の聖女宮に」
「そう、昨日の事もあるし、ほとぼりが冷めればすぐにでも婚約の話をなさい。テレサも喜んでいるでしょう」
「それは勿論です」
勇者御一行の乱入によりうやむやになっているが、正式に婚約を発表したのだから話を進めなくてはならない。
「お前達、テレサは平民だろうが」
「伯父上、テレサは我がエスリード家の人間です」
「そうですわ。元平民だから差別するなんて…聖女として役目を果たしたのだから陛下より爵位と領地ぐらい賜れますわ」
何所までも欲深い二人にクロウリーは呆れてしまった。
(何所まで浅はかで馬鹿な者達だ)
聖女に迎える時にエスリード家の養女としたが、あくまで一時的だ。
テレサの身を守るには平民のままでは危険だという配慮だった。
「最初は何も知らない小娘だったけど、ヘリオスのおかげで貴族令嬢として最低限のマナーは身に付きましたわ」
「当然です」
「教育をしたのはソフィア嬢だろうが」
「基本を教えただけです。モノにしたのはテレサの努力です」
淑女教育や精神的なフォローはすべて丸投げしておいて二人は自分達が聖女育てて行って聞かなかった。
聖女の修業も淑女教育も上手くいかなかったらソフィアを責めていたくせにと内心で愚痴るクロウリーは愛想をつかしていた。
(もう終わりだ…)
婚約破棄の手続きと、慰謝料に関しては自分でなんとかしようと考えていた。
その一週間後。
本当の意味で痛い思いをすることになるのだった。
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