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第一章
26婚約発表
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勇者御一行の滞在もあとわずかを控えた頃、正式に同盟の話が正式発表となった。
本来なら大国の援助を受ける場合は従国となるのだが、あくまで対等な関係を築きたいというフリーレン王国の計らいだった。
その見返りとして大賢者に花嫁を欲しいとのことだ。
大賢者は元はこの国の民であったが、父親がフリーレン王国の王族で侯爵家の子息だった。
嫡男ではなく、家督を引き継げなかったので隣国に留学しそこで美しい女性と出会い恋に落ちて結婚をした。
その子供が後の大賢者となった者で名をエリオル・リモージュだった。
魔王軍討伐の際に軍師を務め、今ではその名を知らぬものはもぐりといわれるぐらいだ。
智・仁・勇に優れた人徳者として正教公国からも一目置かれる存在であった。
そんな彼が欲したのは愛する少女だった。
「この度我が国はフリーレン王国と同盟を結ぶこととなった。その暁にソフィア・クラエス嬢を大賢者殿と婚姻を結ぶこととする。良いかソフィア嬢」
「おおせのままに」
王宮の広間で告げられた言葉は表向きには政略結婚に見えるだろう。
だが頭の良い人間は解るだろう。
大賢者が国を守る見返りにソフィアを差し出せと脅したともいえる。
しかし大半の貴族は文句等言えない。
戦後の傷跡は酷く、共通の敵の魔王がいなくなれば、真っ先に責められるのは小さな国だ。
対するフリーレン王国は魔物を討伐した英雄が集まる国だ。
簡単に手を出せないし、大賢者の妻の国に手を出せば自分の首を絞めるのだから。
国側としてもありがたい。
それにソフィアは婚約を解消された身だ。
何の障害もない。
元平民であるエリオルも侯爵とは言え、婚約者がいる相手ならば多少の問題はあるが。
傷物令嬢なら問題ないのだが…
「実質、彼女は我が国の為に嫁いでくれるのだ。故にクラエス家には爵位を与えようと思う」
「現在伯爵の地位を引き上げ侯爵と、領地を与える」
国王に続き宰相がすらすらと読み上げるが、聞いていた貴族達は驚愕した。
継承以外で領地を与えられる場合は余程の功績が必要だった。
いくら何でもと思うが。
「戦時中、クラエス伯爵は隣国に物資を送り、勇者御一行の手助けのみならず戦後の炊き出しも資材を投げうったようだ。ソフィア嬢も付与魔法で作った魔道具で救われたものが多いと聞く」
「フリーレン王国の錬金術師も驚くほどの技術です」
侯爵の地位は大きいが、権限がそれほどあるわけではない。
政治的に介入できる地位ではなくあくまで領地爵位だ。
それに荒れ放題の領地であるならば高位貴族はそこまで文句は言えないのだが、これには裏があった。
しかしそのことを話すことはしない。
後で後悔するのは宮廷貴族にふんぞりかえっているなりあがり貴族だ。
こうして大勢が見守られる中、婚約は正式なものとされたが。
宰相は咳ばらいをした。
「陛下、忘れておりますぞ」
「おお、そうだったな」
大事な事を忘れていたと思い出す国王は、既に蚊帳の外となっているあの二人を思い出す。
大事な宴をぶち壊しにしたことはまだ許していない。
許せるはずもないのだ。
「我が国の聖女のことで皆に伝えたい」
国王は視線をメティスに向けた。
本来なら大国の援助を受ける場合は従国となるのだが、あくまで対等な関係を築きたいというフリーレン王国の計らいだった。
その見返りとして大賢者に花嫁を欲しいとのことだ。
大賢者は元はこの国の民であったが、父親がフリーレン王国の王族で侯爵家の子息だった。
嫡男ではなく、家督を引き継げなかったので隣国に留学しそこで美しい女性と出会い恋に落ちて結婚をした。
その子供が後の大賢者となった者で名をエリオル・リモージュだった。
魔王軍討伐の際に軍師を務め、今ではその名を知らぬものはもぐりといわれるぐらいだ。
智・仁・勇に優れた人徳者として正教公国からも一目置かれる存在であった。
そんな彼が欲したのは愛する少女だった。
「この度我が国はフリーレン王国と同盟を結ぶこととなった。その暁にソフィア・クラエス嬢を大賢者殿と婚姻を結ぶこととする。良いかソフィア嬢」
「おおせのままに」
王宮の広間で告げられた言葉は表向きには政略結婚に見えるだろう。
だが頭の良い人間は解るだろう。
大賢者が国を守る見返りにソフィアを差し出せと脅したともいえる。
しかし大半の貴族は文句等言えない。
戦後の傷跡は酷く、共通の敵の魔王がいなくなれば、真っ先に責められるのは小さな国だ。
対するフリーレン王国は魔物を討伐した英雄が集まる国だ。
簡単に手を出せないし、大賢者の妻の国に手を出せば自分の首を絞めるのだから。
国側としてもありがたい。
それにソフィアは婚約を解消された身だ。
何の障害もない。
元平民であるエリオルも侯爵とは言え、婚約者がいる相手ならば多少の問題はあるが。
傷物令嬢なら問題ないのだが…
「実質、彼女は我が国の為に嫁いでくれるのだ。故にクラエス家には爵位を与えようと思う」
「現在伯爵の地位を引き上げ侯爵と、領地を与える」
国王に続き宰相がすらすらと読み上げるが、聞いていた貴族達は驚愕した。
継承以外で領地を与えられる場合は余程の功績が必要だった。
いくら何でもと思うが。
「戦時中、クラエス伯爵は隣国に物資を送り、勇者御一行の手助けのみならず戦後の炊き出しも資材を投げうったようだ。ソフィア嬢も付与魔法で作った魔道具で救われたものが多いと聞く」
「フリーレン王国の錬金術師も驚くほどの技術です」
侯爵の地位は大きいが、権限がそれほどあるわけではない。
政治的に介入できる地位ではなくあくまで領地爵位だ。
それに荒れ放題の領地であるならば高位貴族はそこまで文句は言えないのだが、これには裏があった。
しかしそのことを話すことはしない。
後で後悔するのは宮廷貴族にふんぞりかえっているなりあがり貴族だ。
こうして大勢が見守られる中、婚約は正式なものとされたが。
宰相は咳ばらいをした。
「陛下、忘れておりますぞ」
「おお、そうだったな」
大事な事を忘れていたと思い出す国王は、既に蚊帳の外となっているあの二人を思い出す。
大事な宴をぶち壊しにしたことはまだ許していない。
許せるはずもないのだ。
「我が国の聖女のことで皆に伝えたい」
国王は視線をメティスに向けた。
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