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第一章
5婚約破棄
しおりを挟む祝賀会でもある日に縁起が悪いことこの上ない。
表情変えない国王は黙っているが身近な人間に身内が見れば今にも激怒しそうだった。
「あーあ、馬鹿ね。これでお父様が大暴れするわ」
「いけません…」
この時ソフィアはヘリオスの暴走などどうでもよかった。
それよりも国王の怒りを何とかしてなだめるのが先だ。
――この男は何所まで馬鹿なのか!
一部の野次馬以外は誰もが思った。
国王の許可なしに公の場で婚約破棄を言うなど言語道断。
それ以上に今日がどんな日か解っているのか。
「今日の良き日に皆に知っていただきたかったのです。聖女テレサは私の義妹ではありますが血が繋がっていません。平民ですが…私達は思いあっています。これ以上神に偽りの愛は誓えません。愛のない結婚は空しいだけです」
同時にこの馬鹿な男は貴族社会を侮辱した。
貴族の婚姻は政略結婚がおほとんどで恋愛結婚は皆無。
「ヘリオス…そなた」
「陛下、どうかお許しを。ソフィア!君には…」
「承知いたしました。婚約解消を了承しました」
「は?」
「愛する方とどうかお幸せに」
ヘリオスの言葉を遮るようにしてあっさりと言い放つ。
「ソフィア・・・」
「エスリード夫人。私は二人の婚約を心から祝福しますわ」
「それは…」
想像しなかった返答に開いた口が塞がらない。
「テレサ、これまで貴女に厳しく言ってしまってごめんなさいいね?貴女に貴族社会で生きていけるようにと思ったの」
「しらじらしい!テレサ嫉妬していたのだろう!本当は腸が煮えくり返っているのだろう」
「そう思われていたのですね」
恋愛感情は一切なかったが妻になるべく努力して来た。
その態度が余計にヘリオスの自尊心を傷つけてしまったのかもしれない。
他にも問題点はるだろうが――。
「私が知らず、知らず貴方を傷つけてしまっていたのならこの場で謝りますわ」
「そうだ!土下座をしろ!」
「お兄様止めてください!そんな…」
勢いに任せて言いたい放題のヘリオスは公の場で女性を土下座させようとするが、そんな中。
「あら?随分と変わった余興だな」
少しハスキーな声が響く。
「誰だ!」
「余興にしては随分と悪趣味だな」
「今はやっている婚約破棄ネタの演劇か?」
麗しい女性に続き現れたのは隣国の英雄たちだった。
「ソフィー、ただいま」
「エリオル!」
大勢の人込みの中に堂々と現れたのは行方知らずになっていた幼馴染だった。
「綺麗になったねソフィー」
「エリオル…どうして」
よく見ると法衣に身にまとっている。
聖職者のような服装に驚きながらも手を差し伸べられる。
「国王陛下、大変楽しい余興でしたわ。宴を続けてくださいませんか」
「えっ…」
「さぁ、皆音楽を!本日は祝賀会なのですから!」
国王の言葉を遮りメティアが合図をすると軽やかな音楽が奏でられる。
かなり無茶ぶりで予定を無視していたが、国王の怒りはなんとか抑え込むことができた。
ただし注目の的だった二人は完全に無視をして、エリオルとソフィアは完全に二人だけの世界を作っていた。
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