聖女な義妹に恋する婚約者の為に身を引いたら大賢者の花嫁になりました。今更婚約破棄を破棄にはできません!

ユウ

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第一章

4嫌な予感

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大掛かりなパーティーだった。
当然というべきか、隣国の英雄を招くのだから。


それにしても違和感を感じる。
テレサも討伐の際に旅には同行していたと聞くが、最後の討伐では参加していない。


祝賀会と称しながらもなんともおかしな光景だった。


何故なら…


「やはり我が国の希望はテレサだな」

「聖女としての役目を終えたら勿論、王都に残るんだろ」

「当然だ」


まるでお姫様の取り巻きだった。

「まったくもって不愉快だわ」

「殿下…」

何故この場に現れたのか。
普通に気配を消してソフィアの隣にひょっこり現れる。


「あの空気が面倒なのよね。それに貴方の婚約者が何か仕掛けそうなのよ」

「仕掛けるって…」

「鬼畜外道のロマンス小説は覚えていて?」


他に言い方はないのだろうかと思うが、これがメティスの素だ。
普段は完璧な王女であるが、公の場以外ではこうなのだけど。

「姫様!何所ですか!」

「お前達!パーティーが始まる前に探せ!」


いうまでもなく大臣達は胃薬を片手に慌てている。

「急いでお戻りになった方が」

「大丈夫よ。余興がそろそろ始まるし。それにもうすぐ煩わしい事は無くなるわ」

「はい?」

「正確には貴女に注がれる悪い噂と嫌な視線」


人込みでメティスの姿は解らない。
ちゃんとウィッグを身に着け、ばれないように魔法もかけている。

用意周到な王女である。
だけどここまでする理由は何だと思いながら。


パーティーが始まる。
そんな中、テレサはヘリオスに手を引かれエスコートをされる。


今日の装いは高位貴族が着るような一級品だ。
ただしドレスに着せられているといった感じで似合っているかと聞かれれば微妙だ。


しかし悪目立ちしている。
婚約者がいながら二人の装いはまるで婚約者のようだ。

ヘリオスのネクタイの色と、テレサのリボンは同じ色だ。
しかも家紋の入ったブローチはヘリオスの瞳の色ですべてがお膳立てされている。


「この場の皆様にご報告があります」

ヘリオスは視線の中心で告げた。
今一番注目を浴びている女性でもあるのだ。

この国の聖女はテレサだけだ。
聖女として正式に求められ、隣国の勇者一行が魔王軍を討伐したことで聖女の知名度も上がっただろう。

同時に悪い噂もある。


「この度、大事なご報告があります」

私に視線を向ける。

「何だ?」

「ここにいる皆様にご報告いたします。そして陛下に許可をいただきたいのです」

「申してみよ。今日はめでたき日であるが…勇者御一行はまだ到着しておらぬ」

国王はめでたい日なので多少のことは大目に見ようと思っていたのだが…


「はい、この度を思ってソフィア・クラリスとの婚約を破棄して聖女テレサを妻に迎えたく思います!」


声高らかに告げられた言葉は多少大目に見る程度で許されるものではなかった。


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