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第一章
2誤解
しおりを挟む聖女であるから過度な着飾りは必要ない。
数年前は素朴でありながらも美しさもあったのだ。
「あいつは聖女を誤解しているんじゃないか」
「申し訳ありません。私の不徳の致すところでございます」
現在公王女宮にて。
ワインを届けに来ていたのだが、最近の聖女の取り巻きを心配していた。
「テレサも何を考えているのか」
「はい」
最近は二人きりで会うこともない。
先日は魔物討伐に闇ギルドの摘発にも参加していたのだから。
「来週、王家のパーティーが行われるわ」
「パーティー?」
「遅くなったけど帰還パーティーを我が国で行うの」
隣国の勇者御一行が魔王軍の討伐を終えた後に復興活動に後始末に追われていた。
「現在我が国も魔物の影響でめやくちゃよ…先を読めない貴族が税金を増やせばいいと馬鹿な事を」
「それは無理でしょうね」
「ええ、なのに剣で脅そうとしているわ」
王女メティスは聡明な姫だった。
第一王位継承権を持ちながらも大臣からは公爵家を婿に迎えるべきだと言っているのだが。
「聖女にご執心なのは私の馬鹿婚約者もだけどね」
「殿下…」
「そうそう、取り巻きの一人が婚約者とのデートをすっぽかしてテレサに会いに行ったそうよ」
聖女として完全に目覚めてからはヘリオスをはじめ傍にいる貴族達はおかしくなった。
いかに聖女でも婚約者をないがしろにしていいわけではない。
「最近では真実の愛ブームらしいわ」
「最悪なブームではありませんか」
「ふふ…ロマンス小説では公の場で婚約者をつるし上げにするみたいね。本当にそんなことしたら破滅なのにね?」
騎士と姫君の物語が主流だったが、今では真実の愛のために何もかも捨てて生きていく物語が流行している。
「他国では婚約者を悪女に仕立て上げる鬼畜外道な真似をするそうね」
「殿下、そのような過激な」
「だって、情報を入手するのは必要でしょう?でも、狂気の沙汰ってこういうのを言うのね」
笑っているが目が笑っていない。
「食料に関しては我が領地の玄米に麦を配給いたします」
「助かるわ」
「ただ品質が…」
貴族が口にするには美味しくないのだが、食糧庫も危ないのでそんなことは言ってられない。
「飢え死にするよりいいでしょ?本当に惜しいわ…」
「はい?」
メティスの表情にキョトンとするソフィア。
「まぁいいわ。今度のパーティーはお酒よりも料理をたくさん出したいの。隣国の王女殿下はパイが大好物なのよ」
「珍しいですね」
「ええ、昔クラエス家の特産物のレモンパイを見せびらかしたのよ」
「何をされているんですか」
完璧な王女であるかが時々お茶目だった。
庶民的な思考を持ち合わせ、豪華な食事よりも手づかみの食事を好むのは国王の教育の賜物だった。
その為護衛騎士に宰相は胃薬を持ち歩いているのだが。
「よろしくね?」
「はっ…はい」
そして無茶ぶりも国一番だ。
しかしそのパーティーでとんでもない騒動が起きることになるのだった。
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