聖女な義妹に恋する婚約者の為に身を引いたら大賢者の花嫁になりました。今更婚約破棄を破棄にはできません!

ユウ

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第一章

1狂気の沙汰

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日に日にヘリオスの行動はエスカレートしていく。
大事なパーティーではテレサを優先して、ソフィアの誕生日や行事には参加しなくなった。


それどころか高級なプレゼントを贈るヘリオス。
しかも金銭的に厳しくなると、とんでもない行動に出た。


「お嬢様…あれを」

「これは」

ソフィアからの贈り物が売りに出されている。

「あの男…」

「落ち着いてアン」

侍女のアンは激怒した。
彫金師でもあるソフィアは贈り物としてアクセサリーを手作りしていた。

普通の職人が作るよりも価値のあるものだ。
ドワーフも重宝する品なのだが、売りに出されていた。

「失礼、主人」

「何だ?」

「その品はどなたが売ったんですか」

「売ったんじゃなくて交換してやったんだよ」

「交換?」

何故交換なのかと二人は思った。

「この夫婦指輪が欲しいとかで」

「夫婦指輪…」

「何でもいい人にやるんだとか…隣のお嬢さんは知らなかったみたいだけどな」


二人は嫌な予感がした。
夫婦指輪とは結婚を約束した恋人に送る物だ。


「その女性の特徴は」

「金髪に翡翠の瞳だったな」

「そっ…そうですか」


考えたくもない。
相手は言うまでもなくテレサだと思った。


「そうでしたか。ありがとうございます」

笑顔でお礼を言ってその場を去る。


「お嬢様」

「散財していたものね。お金がないのでしょう」

「だからって…」


金遣いが荒いのは知っていた。
でもここまでとは。

恐らく借金をしているかもしれない。

「伯爵家のお金に手が出せないように手続きを」

「承知しました」


あくまで保険だ。
まさかここまで馬鹿な真似をしないと思った。

しかし翌日。

「お嬢様、先日はヘリオス様がお嬢様の名義で借金をしようとされたようで」

「ああ…」

眩暈がした。
まさか本当にしようとしたとは。

あの時の時点で保険をかけた。
現金以外の貸付はできないようにした。

通常ある程度の年齢になれば信用があれば前借で買い物ができる。
小切手にサインをすることも。

ただしソフィアは無駄にお金を使わないように必要最低限しか現金を持ち歩かない。
前借できるカードは念のためにストップさせたのだが、その日に使われるとは思わなかった。。


「町で騒いでいるのを見かけたそうです」

「はぁー…」

クラエス家は湯水のようにお金を使っても傾かないわけではない。
質素倹約を心掛けているのだから。


「ソフィア、どういうことだ!」

「何がです?」


町で買い物ができなくなっていたので文句を言いに来たようだ。

「お兄様、止めてください」

「君と共有しているカードの口座に金がないと」

「限度額が超えたのではありませんか?」


二人で共有しているカードの残高を決められているのだが、その限度額が超えたのだ。


「だったらすぐに」

「無理ですわ」

「何だと!」


ソフィアは呆れた。
商人貴族ならば審査があるのは知っているはずだ。

なのにすぐに限度額を上げろだなんて無理だ。


「お前は義妹の為にもう少し何かしてやろうという気はないのか!」

「お兄様!」

「君の先日の贈り物は何だ。あんな見すぼらしいブローチを」


ソフィアは戦場にも出ないといけないテレサを思って防御力のあるブローチをプレゼントした。

しかもそのデザインはテレサの母親の好んだ花をモチーフにしたのだ。

ソフィアの気遣いだがヘリオスは気づかなかった。


「お兄様、私は贈り物はもういいですわ」

「何を言っている。王宮で恥をかくんだぞ!ソフィア、お前ももう少しテレサの立場を考えてやれ」


乱暴に言い放つヘリオスはそのままテレサの肩を抱き馬車に乗り込んでいった。

その場でソフィアは取り残されたのだった。


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