1 / 117
第一章
プロローグ
しおりを挟む聖女伝説。
この国には様々な英雄伝説がある。
聖女伝説も同じようなものだ。
女神に力を与えらえた聖女が聖なる祈りで国を守ると。
その力は未知なるもので、聖女に選ばれる乙女は平民だったり貴族だったりと色々だ。
その聖女を王宮に迎える時に、決まりごとがある。
まず高位貴族や王家に近すぎる者は後見人になる事はできない。
聖女を利用する可能性があるからだ。
逆に身分が低すぎるのも問題となるので階級は伯爵家ということになる。
今から五年前、戦争が続く最中。
一つの町から光が放たれた。
神殿に仕える巫女達は聖女が現れたことを知らせた。
今生の聖女は平民だった。
急いで使者を送り、聖女を迎えることになったがその聖女は金髪に翡翠の瞳を持つ美しい容姿をしていた。
王家はすぐに召し上げようと考えたが相手は平民。
しかも後ろ盾を先に用意することにしたのだが、後ろ盾に選んだ家が伯爵家だった。
大貴族ではなく商人貴族だ。
なまじ大貴族の家に迎えるのは危険があったのだ。
しかしいきなり連れてこられて聖女ですと言われ委縮してしまった。
そこで白羽の矢が立ったのが似た年頃で、その家の嫡男の婚約者であるソフィアだった。
「初めまして聖女様、私はソフィア・クラエスでございます」
「俺の婚約者だ。後に君の義姉になる」
「・・・・」
「お会いできて光栄です」
最初こそは警戒していたテレサにソフィアは無理に話しかけることもせずに見守った。
その努力の末にテレサは。
「私…ちゃんと話せなくて」
「まぁ、そうでしたの」
二人きりの時にぽつりと言教えてくれた。
「私の言葉…訛っているから変だと」
「まぁ、そんなことはありませんわよ。ですが貴族は少し面倒なんです」
「え!」
ソフィアの言葉に驚くテレサ。
クラエス家は何代も続く貴族の家柄であるが、騎士の家柄だった。
親族は百姓貴族で果物農園で利益を得ているのだ。
「私も田舎貴族でしたの。ですから苦手でしたわ」
「そうなんですか」
「領地はぼぶどう園なんです」
「私も!」
共通点が多く二人は仲良くなった。
しかし三か月程でテレサは王宮に呼ばれてしまい別れの時は泣いていた。
「テレサ!大丈夫だ…すぐに会いに行く」
涙ながらに手を伸ばすテレサにヘリオスは守ってやらなくてはならないという使命感が芽生えたのだ。
「テレサ…」
元より弱弱しさを持つテレサを可愛く思っていた。
なのだが、その思いは日に日に膨れ上がるようになった。
その後、ヘリオスの心に変化が訪れたのだ。
「ソフィア、今度の週末はテレサの誕生日だ」
「そうね」
最初こそはほほえましいものだったが。
「明日のパーティーはテレサをエスコートするから君は父親に頼んでくれ」
「解りました」
テレサに対して行き過ぎた行動に出るようになる。
その所為で噂を流されてしまう。
婚約者がいるのに父親にエスコートしてもらう日々。
周りにはあらぬ憶測を呼ぶ中、王家主催のパーティーでも。
「エスコートできない?」
「ああ、テレサの・・」
「ですが今日は父は…」
「君は一人で大丈夫だろう?テレサは俺がいないと」
もう慣れてしまったその言葉。
「テレサ…」
ヘリオスは聖女であるテレサに恋をしてしまっているのだ。
246
お気に入りに追加
5,223
あなたにおすすめの小説
離婚した彼女は死ぬことにした
まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。
-----------------
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
-----------------
とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。
まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。
書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。
作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。
下げ渡された婚約者
相生紗季
ファンタジー
マグナリード王家第三王子のアルフレッドは、優秀な兄と姉のおかげで、政務に干渉することなく気ままに過ごしていた。
しかしある日、第一王子である兄が言った。
「ルイーザとの婚約を破棄する」
愛する人を見つけた兄は、政治のために決められた許嫁との婚約を破棄したいらしい。
「あのルイーザが受け入れたのか?」
「代わりの婿を用意するならという条件付きで」
「代わり?」
「お前だ、アルフレッド!」
おさがりの婚約者なんて聞いてない!
しかもルイーザは誰もが畏れる冷酷な侯爵令嬢。
アルフレッドが怯えながらもルイーザのもとへと訪ねると、彼女は氷のような瞳から――涙をこぼした。
「あいつは、僕たちのことなんかどうでもいいんだ」
「ふたりで見返そう――あいつから王位を奪うんだ」

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

覚悟はありますか?
翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。
「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」
ご都合主義な創作作品です。
異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。
恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる