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62.義父の怒り~姑side
しおりを挟む怒りを露わにする夫を宥めながら私は冷たい視線を向けた。
「何をしに来たの?」
「母さん!」
「もう貴方の母ではありません。我が家に土足で踏み込むとは何事です」
良くも平然と我が家の敷居を跨げたものだわ。
「もう親子の縁は切っています。この家に足を踏み入れる事は許しません。今すぐ目の前から消えなさい」
「母さん、お願いだ。金を工面してくれないか」
「何て意地汚い事を…お金を無心に来たのですか」
大体は想像がついていたのだけど、こんな早くに根を上げて来るなんて。
「カードも使えないし、ローンをしたくてももう…」
「貯えもなく、信用もない貴方に貸してくれるはずもありませんわね?車なり、売ればいいでしょう?」
「それは…」
「貴方の見栄と運命とやらで結ばれた愛しの妻の為にもね?」
「母さん!」
結局、あの馬鹿な女にお金を使われて、財産は空っぽになったのでしょうけど。
「お前は、我が家にどれだけ泥を塗れば満足なんだ」
「そんな、俺は…」
「千歳さんは一人でも立派に生きているのになんて事なのかしら?彼女は我が家の支援はないのに今では立派な職務に就いているわ」
「そんなのお情けだろう!自分の実力じゃない…・悲劇のヒロインぶって同情を買って卑しい女だから」
「貴様ぁぁ!」
夫は千歳さんを可愛がっていた。
私の彼女を認めていたからこそ、この言葉は絶対に許せないかった。
「何と言う事を…なんて酷い事を」
「お義父様」
「貴様は何処まで見下げ果てた奴なんだ」
「お祖父さ…」
病気で麻痺で杖無しでは立つ事も歩く事も難しかったはずなのに。
義父は立ち上がり歩いていた。
「この馬鹿者が!」
「ぶっ!」
気力を失い、破棄すら失っていた義父は良純の胸倉を掴んで投げ飛ばした。
「これは…」
「怒りのあまりに体が動いたのか…それにしても」
病で体が動きにくかったのに。
「怒りで体が動いたのか…」
「心が動けば体も動くと医師は言っていたが、本当だったのか」
投げ飛ばされて唖然としているけど、無視しをした。
「足は…」
「歩ける」
「ああ、よかった」
私達はお義父様が歩けるようになったことを心から喜んだ。
「急いで医師に連絡しなくては」
「ああ」
きっと、千歳さんを思う気持ちが義父に力を与えてくれたのね。
その後言うまでもなく義父は良純をのボコボコにした後に道端に捨てたのは言うまでもない。
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