47 / 87
47.美しい思い出
しおりを挟む昔を懐かしみながら彼を思い出す。
「鬼塚君…」
今どうしているだろうか。
卒業後は別々の道を歩み彼は大学に進み私は看護師の道に進んだ。
一度病院で再会をしたけど。
あの頃と変わっていて背も伸びて素敵になっていた。
結婚してからは合う事もなかったけど。
元夫のライバル会社で活躍していると耳にする程度だけど。
雑誌にでも出る程で、私の事のじゃないのに彼が活躍しているのを聞くたびに嬉しくなった。
「本当は誰よりも優秀だったものね」
学生時代は引っ込み思案であったけど、真面目で気遣いができて本当に優しい男の子で。
「初恋だったのよね」
告白はできなかったけど私は中等部の頃から彼が好きだった。
クラスが同じで挨拶から始めたけど、自分の気持ちを伝えられなかった事を卒業して後悔したこともあったけど、私の心の中に閉まっていた。
けれどふとした時に思い出す。
学生時代の事を。
「今、貴方はどうしてますか」
私が看護師に進み覚悟を決めるきっかけになったのは彼が背中を押してくれたから。
彼にとっては他愛無い事でも私にとっては大切な言葉だった。
「いけないわ。感傷に浸ってる場合じゃないわ」
今はこのバーガーを売る事を考えなくちゃね!
「よし、まずは奥の方に行きますか」
気合を入れて売り込みに向かった私は必ず売るぞと言い聞かせた。
一時間後。
「まぁまぁね」
即完売とは行かなくとも、そこそこ売れている。
そんな中。
「こんな所で配達か」
この声は!
「ハンバーガーが売れないから、売りに歩いているなんて見っとも無いわね」
忘れたくても忘れられない。
「まったく見っとも無いな。商売の何たるかもわかってないとか。ハンバーガなんて貧乏人の浅ましい食い物を必死になって売るとはな」
「まぁ、貧乏くさい女だもの。お似合いよ…しかも商店街のパン屋と肉屋が作った物なんて」
「今時パン屋、肉なんて大手スーパーの方が安いし美味いというのに、本当にも何も知らないんだな」
宮内と、あの人だった。
「商店街には商店街の良さがあります。決めるのは貴方ではなくお客様です」
「その証拠にガラガラだろ」
「今から巻き返しもできますので失礼します」
本当に嫌味な人達。
真面に付き合うだけ無駄だった思った。
「おい!」
「お互い頑張りましょう。失礼します」
「この!」
私の態度が気に入らなかったのか腕を掴まれる。
「きゃあ!」
「出来損ないの癖に!」
「何を!」
私の持っている籠を奪い地面にたたきつけられた。
1
お気に入りに追加
1,455
あなたにおすすめの小説

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします
柚木ゆず
恋愛
※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。
我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。
けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。
「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」
そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

ある辺境伯の後悔
だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。
父親似だが目元が妻によく似た長女と
目元は自分譲りだが母親似の長男。
愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。
愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

私は、忠告を致しましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私マリエスは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢ロマーヌ様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
ロマーヌ様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は常に最愛の方に護っていただいているので、貴方様には悪意があると気付けるのですよ。
ロマーヌ様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。

アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる