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45.ピンチ
しおりを挟むフェスティバル当日。
宣伝もしていたのに麦屋には一切お客さんが来なかった。
「どうして…どういうことスか!」
「こんな!」
何故一人も通らないのか。
最近は麦屋のパンは売れていて、若い世代の人にも人気だったはず。
なのに何故?
「大変だよ!」
「おばちゃん!」
「この先の店で、同じ名前のバーガーが売られているんだ!」
今回宣伝にご協力いただいた隣のおばさんが大慌てでチラシを見せてくれた。
「ベーカリーMUGI?」
「なんスか!名前が似ているし。メニューも内と同じじゃないスか!」
「こんな事…」
名前が似ているのは解る。
ハンバーガーの種類が似ているのも解るけど、ここまで丸カブリだなんて。
「大変よお母さん!」
「愛、どうしたの?」
「あのパクリ屋…あの男がスポンサーらしいのよ!」
あの男?
「アンタの元旦那だよ!このフェスに参加してんだよ」
「は?」
「あの人の部署は営業でありますが…」
営業の部署であるけど、何でまた。
「絶対嫌がらせじゃない」
「それはあるんじゃないかい?噂では会社で大きな失敗をされて左遷されたらしいからね。何でも取引先を怒らせたとかで…まぁ噂だけど」
「だからと言って、何処で情報が漏れたのでしょう」
「今はそんな事よりも客数だよあっちの方が料金も安くてボリュームもある…対してこっちはどうだい!」
既にフェスが始まり昼食時間になっている。
このままの状況が続けば、賞を取るどころかビリになる可能性が高い。
どうしたら…
「やっぱり無理なのか?ここまで頑張ったのに…俺は麦屋さんを助ける事も出来なかったのか」
「丹波屋さん…」
今日のフェスにすべてをかけると約束した。
丹波屋さんはただ、店長に恩返しをしたいと言う思いで、今日の日まで寝る暇も惜しんで借金を背負ってまで最高の肉を仕入れる為に頭を下げて回ってくれた。
店長にしたって同じだ。
私を信じ、睡眠をほとんどとらずに最高のパンを作っていたのだから。
「お母さん…」
「こうなったら切り込みます」
私のすべきことは何?
ここでお客様が来るのを持つ?
お客様が来ないなら自ら掴みに行けばいい。
来てくださらないならこっちから行くわ。
「今すぐ商品を詰めてください。押し車を用意してメガホンも!」
「「「は?」」」
こうなったら学生時代にしたあれをするわ!
これでも学生時代は文化祭運営部を任されたんだから!
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