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42.同士
しおりを挟む新商品のハンバーガーは二時間にして完売した。
食べてまずければ全額返金と、売り子の三人が頑張ってくれたおかげだ。
「ありがとうございます!本当に」
「お礼を言うのはこっちですよ」
店長に頭を下げるのは、この商店街で一番古い肉屋さんの丹波屋だった。
昔ながらの国産のお肉に拘るも、最近は輸入品が多くて廃業の危機だったのだけど。
品質は良く、麦屋のパンと相性が抜群だった。
「うちのパンでは他所のミンチじゃ旨味不足で物足りない。特にソースが何処の肉屋やレストランでもアウトだけど、ここのソースはシンプルなのにもっと食べたくなったんスよ!俺も食べたけどすげぇ美味くて」
「ありがとうございます。そう言っていただけるだけで…最後にこんな良い仕事をいただきまして」
既に赤字となり、店は借金まみれでお店の権利も奪われる寸前だった。
隣にレストランができた所為で、諦めているようだ。
「オヤジさん!ダメっスよ。アンタが引退したら俺のハンバーガーはどうなるんスか!こんな美味い肉はよそにないスよ」
「しかし…」
「まだ時間はあります。来月のフェスティバルで勝負をすれば巻き返しができるはずです」
「「は?」」
私はこのハンバーガーを考案したのは、麦屋を救うだけじゃない。
丹波屋をも救えると考えたからだ。
「来月に行われるフェスティバルは全国のパン屋が出展されます。そこでハンバーガーを出店するんです。一般客には大学生もいますし宣伝できます。お二人の最高の技術を使い、日本一美味しいお肉とパンがコラボしたと知らしめるんです」
「日本一…」
「いいえ、日本一なんて小さく出てはなりません。世界一を目指してください。自分達が作ったパンが世界一美味しいんだって言うぐらいの気構えを持って欲しいんです」
そうじゃないと、この不景気で生き残る事は出来ない。
「安いだけのパンにハンバーガーに負けないでください。高くとも出す価値のある物を作っているのですから」
私はこの二人が、どれだけ苦しみながらもお客様の為を思って作っているか知っている。
「丹波さんは二十年前に、牛の病気で肉が食べられない時期に羊の肉を代用しましたと聞きます。肉が食べたいと言う消費者の心に寄り添う為に」
「どうしてそれを」
「調べさせていただきました。牛が病にかかり、一時は牛肉の販売禁止令が出された時に、貴方は別の形を取った。そんな貴方達が評価されないのは間違ってます」
ここまで食べる人の事を考えている二人が引退なんてダメだわ。
この二つのお店を守る事は、子供達の未来を守る事になると確信していた。
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