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24.豪邸
しおりを挟む都内から離れた高級住宅街のその先。
「こっ、これは」
「すごい」
私と愛はキム夫人に招待を受け、彼女の別邸に招かれていた。
「ねぇ?ここ何所?」
「言わないの」
宮内家でだってそれなりの家だったけど、規模が違い過ぎる。
流石韓国でも一番の大富豪と言わしめる程で敷地内が広く、高級ホテルにただっぴろい庭園が広がりプールもある。
「少し手狭なのですが…」
((これでか!))
キム夫人は世界中を渡り、仕事をしているため世界各地に別邸を持っている。
ホテルの運営もしている事からアジアのホテルはほぼ彼女は制圧していると言っても過言ではないそうだ。
「でも、韓国風じゃないんですね」
「私は昔からフランスと日本が大好きですの。若い頃に日本に来てすっかり虜になってしまったんですのよ」
「日本人として嬉しく思います」
庭園を見るとロココ風の庭園に対して、日本庭園の造りも見えた。
フランスはともかく、日本に対してここまで愛着を持ってくれるのは嬉しいものだ。
「この先が邸です」
「近くで見ると、余計に大きく感じる」
何だか、場違いな気がしてしまう。
「お帰りなさいませ奥様」
「ただいま。紹介します。我が家のシェフのゼフです」
見るからに品の良さそうな人だった。
「初めまして、高宮千歳と申します」
「娘の愛です」
「シェフのゼフと申します。この度はようこそおこしくださいました」
まるで高級ホテルに来たようなもてなしを受けた私達は気後れする物ばかりだった。
「ようこそおこしくださいました」
カーディガンを羽織顔色の悪いユナ様が姿を見せられる。
「ユナさん…そちらは」
「点滴ですわ。一日三回は受けないとダメで」
既に水を飲むのも苦しい状況だと聞かされ、事態は私が思う以上に厳しいと思った。
「先日ハーブティーを好まれたようでしたので。フルーツを使ったハーブティーをお持ちしました」
「まぁ…ありがとうございます」
「早速お入れしますね」
「お願いします」
キム夫人に厨房を案内され私は急いでお茶の準備をする。
「銅のやかんをお使いに?」
「ええ、こっちの方がお茶が美味しくなるので」
一度に沸騰させたお湯の方がお茶は美味しい。
特に紅茶やハーブティーには銅のやかんが一番だから。
「こちらのハーブは?」
「私が作った物です。以前ハーブティーを飲まれた時にカモミールの香りを気に入られたのようでしたので」
「お嬢様が生まれた場所にはマーガレット等が咲いていたので…もしや懐かしかったのではないでしょうか」
頂いたリストの中には海産物を使った料理は多かったのに対して、好きな果物は書かれていなかった。
「お嬢様は幼少期を日本で過ごされたのですよね」
「はい」
「できましたら、三歳から五歳まで何を食べておられたかお教えくださいませんか」
「それはかまいませんが」
恐らくヒントはそこにある。
普通に紅茶やジュースは胃が受け付けず水はかろうじて飲める状況であるが、あの時。
ハーブティーを飲んでいた。
飲むときに香りを楽しんでいたと言う事はだ。
嗅覚はしっかりしている。
もし…
私の判断が正しければ。
食べて貰えるはず。
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