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8.大事にしたくない理由
しおりを挟む沢山の人を傷つけ心配をかけてしまった私は、これ以上迷惑をかけたくなかった。
だから、宮内家の名をこれ以上傷つけたくない。
元夫の事は許せなくとも、宮内家の皆さんはこんな私を可愛がってくださったのだから。
「甘いわ…甘いわよ千歳ちゃん!」
「夏目さん」
同じくママ友であり、弁護士をしている工藤夏目さんが激怒した。
「浮気して、暴力振るって、しかも嫁入り道具を売る時点で、裁判で勝てるわよ!法廷で戦ってぶっ潰してやればいいわ」
「そうよ。私の知り合いに広告会社で働いている友人がいるから公に…」
「ダメです!」
公になんてしたくないし浮気で離婚したなんてしたら。
「言葉に気をつけなさい。浮気で離婚なんて不名誉だわ。何よりあの男が自分をさも被害者のように言いふらすわ。千歳ちゃんが一番恐れているのは愛ちゃんの将来と元実家の家族よね?」
「はい…お姑様の葬儀が終わったばかりで」
「クソ野郎は許せないけど、おまささんの事を思うとね」
愛称おまささん。
義祖母はご近所ではそうよばれていた。
義祖母を尊敬する人は多かったしボランティア活動も活発にし、子育てで悩む人の悩み相談も聞いていた事から葬儀の参列者も多かった。
「義祖母には本当に可愛がっていただきました。義母とも色々ありましたが…」
「まぁね?」
私自身は足りない部分もあって姑には随分怒られていたけど。
それでも、面倒見の良さ故に、厳しい指導の元料理も教わっていたし尊敬もしている。
何より気がかりなのは。
「義祖父の体が心配です」
「病気だったわね」
「はい、もうお歳ですし」
義祖母の事を案じており、私と一緒にお世話をしていたけど。
葬儀が終わってすぐ疲れが出て寝込んでしまった。
元からリウマチと糖尿病を患って体が不自由だったのもある。
「もう会いに行くこともできません」
「何故?」
「え?だって…」
私は離婚したのよ?
会いに行けるはずがないわ。
「ちゃんと離婚したことを話してないでしょ?」
「でも…宮内に会うなと」
「それこそおかしいわよ。大体ね、両親が留守なのを狙って離婚を突きつけたのよ!絶対裏があるわ。しかも祖母の葬儀のすぐ後なんて」
「離婚するならもっと後でも良かったはずよ…すぐに離婚しないとダメな理由って何かしら?」
夏目さんの言葉に同意する他のママ友達。
確かに違和感を感じた。
離婚をやたらとお急ぎ、元実家に近づいて欲しくない素振りを見せていたわ。
いくら何でも離婚する前に家族に報告するのが普通だわ。
遠方にいる私の両親ならまだしも。
「確認をしたいのだけど、いいかしら?」
「はい」
仕事モードになる夏目さんは弁護士の顔をし始め、私に質問を投げかけた。
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