130 / 133
28責任と義務
しおりを挟む王族貴族は国と民を守る義務と責任がある。
責任を放棄するのは罪だと言われている。
――ノブレス・オブリージュ。
この言葉は世界共通となっている。
私達は民を守る義務がある。
その義務を放棄することは決して許されないのだから。
「やはり貴様には貴族の誇りもないのだろう」
「何ですって?」
「子供のころからわがまま放題で父親の権力でどんな願いも叶え手られてきた。おおかたその元婚約者も貴様など愛していなかった…その石像は二人離れないように手を握っている」
「ルリ様…」
「エリーゼ、こんな悪女に耳を貸すな。これはなるべくしてなったのだ」
ルリ様の言葉が心を打つ。
私が知る限りこの二人は絆があった。
恋愛感情よりもずっと強い何かを。
「王族貴族は民を守るのが役目だ。貴様は自分の役目を全うせず欲望だけを持ち続けた…そして王家に召し抱えられた。だがその後はどうだ」
「黙れ…」
「何もしてこなかったのだろう。だから破滅の道を進んだ」
「黙れ!」
「お前は自分で自分の破滅の道を選んだ。エリーゼに八つ当たりをするなど許されるか!誰も愛していないお前に誰が愛するか!」
ルリ様のまっすぐな言葉が私を救ってくれた。
これまでしてきたことは絶対に正しいのかと問われたら自信がない。
でも、これまで私は折り合いをつけて来た。
その都度、自分の選んだ道をまっすぐ進んできたのだ。
途中で間違いだったか?本当はよかったのかと思う時もあったけど。
「エリーゼは一度でも逃げたか!好きでもない男に嫁ぎ蔑まれ、最後は他国の騎士に下賜されたも同然でも一度でも自分の境遇を嘆いたか!」
「黙れ黙れ!」
「エリーゼと貴様の違いは挑んだか、逃げたかの違いだ。貴様は逃げ続けただけだ!敵前逃亡した貴様に幸せが巡るものか!」
「いや、若干違くねぇか?」
「そこは水を差すでない」
マクシミリアン様と教皇様の突っ込みは最もだけど。
でも言っていることは間違いではない気がする。
アラクネ様は確かに運命に翻弄されたかもしれないけど、役目を全うし幸せになる方法はいくらでもあったはずだわ。
なのに放棄してしまった。
「大方、お前の元婚約者も金の権力で無理やり婚約に結び付けたんだろうよ」
「そんなはず…」
「あら?私の調べでは貴方の婚約者は父親に売られたと聞いたわ。証言もあるわ…婚約に耐え切れず教会にお祈りに来てカウンセリングを受けたともね」
「嘘だ…嘘だ嘘だ!」
「教会で妙齢の女性と出会い親しくなっていたことから二人は愛し合っていたとも聞くわ」
「そんな話誰が信じるものか!」
オリヴィエ様様の証言は間違いないと思う。
実際教会で懺悔に来ていたというのは私も知っているし。
当初は顔色が悪かった。
でもある日を境に元気になったと聞いている。
私の専属護衛につく少し前のことだったけど。
659
お気に入りに追加
3,939
あなたにおすすめの小説

ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。

一年で死ぬなら
朝山みどり
恋愛
一族のお食事会の主な話題はクレアをばかにする事と同じ年のいとこを褒めることだった。
理不尽と思いながらもクレアはじっと下を向いていた。
そんなある日、体の不調が続いたクレアは医者に行った。
そこでクレアは心臓が弱っていて、余命一年とわかった。
一年、我慢しても一年。好きにしても一年。吹っ切れたクレアは・・・・・

私が死んだあとの世界で
もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。
初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。
だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。

【完結】元妃は多くを望まない
つくも茄子
恋愛
シャーロット・カールストン侯爵令嬢は、元上級妃。
このたび、めでたく(?)国王陛下の信頼厚い側近に下賜された。
花嫁は下賜された翌日に一人の侍女を伴って郵便局に赴いたのだ。理由はお世話になった人達にある書類を郵送するために。
その足で実家に出戻ったシャーロット。
実はこの下賜、王命でのものだった。
それもシャーロットを公の場で断罪したうえでの下賜。
断罪理由は「寵妃の悪質な嫌がらせ」だった。
シャーロットには全く覚えのないモノ。当然、これは冤罪。
私は、あなたたちに「誠意」を求めます。
誠意ある対応。
彼女が求めるのは微々たるもの。
果たしてその結果は如何に!?
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

家から追い出された後、私は皇帝陛下の隠し子だったということが判明したらしいです。
新野乃花(大舟)
恋愛
13歳の少女レベッカは物心ついた時から、自分の父だと名乗るリーゲルから虐げられていた。その最中、リーゲルはセレスティンという女性と結ばれることとなり、その時のセレスティンの連れ子がマイアであった。それ以降、レベッカは父リーゲル、母セレスティン、義妹マイアの3人からそれまで以上に虐げられる生活を送らなければならなくなった…。
そんなある日の事、些細なきっかけから機嫌を損ねたリーゲルはレベッカに対し、今すぐ家から出ていくよう言い放った。レベッカはその言葉に従い、弱弱しい体を引きずって家を出ていくほかなかった…。
しかしその後、リーゲルたちのもとに信じられない知らせがもたらされることとなる。これまで自分たちが虐げていたレベッカは、時の皇帝であるグローリアの隠し子だったのだと…。その知らせを聞いて顔を青くする3人だったが、もうすべてが手遅れなのだった…。
※カクヨムにも投稿しています!

【本編完結】実の家族よりも、そんなに従姉妹(いとこ)が可愛いですか?
のんのこ
恋愛
侯爵令嬢セイラは、両親を亡くした従姉妹(いとこ)であるミレイユと暮らしている。
両親や兄はミレイユばかりを溺愛し、実の家族であるセイラのことは意にも介さない。
そんなセイラを救ってくれたのは兄の友人でもある公爵令息キースだった…
本垢執筆のためのリハビリ作品です(;;)
本垢では『婚約者が同僚の女騎士に〜』とか、『兄が私を愛していると〜』とか、『最愛の勇者が〜』とか書いてます。
ちょっとタイトル曖昧で間違ってるかも?

妹がいらないと言った婚約者は最高でした
朝山みどり
恋愛
わたしは、侯爵家の長女。跡取りとして学院にも行かず、執務をやって来た。婿に来る王子殿下も好きなのは妹。両親も気楽に遊んでいる妹が大事だ。
息詰まる毎日だった。そんなある日、思いがけない事が起こった。
わたしはそれを利用した。大事にしたい人も見つけた。わたしは幸せになる為に精一杯の事をする。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる