寵妃にすべてを奪われ下賜された先は毒薔薇の貴公子でしたが、何故か愛されてしまいました!

ユウ

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私がエリーゼ様の護衛騎士として働くようになり周りの人間は軽蔑の目で見てきた。


まるで汚いの物を見すような目だった。
これがエリーゼ様が置かれている状況かと思うとあの馬鹿王子に不快感を抱いた。


私達はこれまであんな馬鹿王子を守ろうとしてきたのか。

妻がつらい思いをしているのに見て見ぬふりをして、かと思えば面倒な仕事を押し付ける。

現に今もだ。


「エリーゼ様、その書類は」

「ええ予算の見直しで」

よく見ると筆跡はあの馬鹿王子のものだ。
面倒な計算などはエリーゼ様に押し付け、ほかにも戦死した遺族への手紙もすべてエリーゼ様が書いているのに、あて名はアラクネ様になっている。


「何故このような…」

「私の名前で出せば、また反感を奪います。人気取りもいい加減にしろと…そんなつもりはないのですが」


申し訳なさそうに微笑まれるお姿が痛々しい。
お召し物も質素で寒い冬は寒さをしのぐこともできず薪すら十分に用意されていない。

この状況を殿下は知っているはずだ。
先日のこの離宮に仕えていたメイドがエリーゼ様の待遇の悪さを心配して意見を出したが不敬罪になり王都を追放された。


少しでもエリーゼ様に味方をするものは酷い仕打ちを受ける。
どうしてここまで酷いことができるんだ。

幼少期からともに手を取り合ってきたのではないのか?
殿下はエリーゼ様に情の一つもないのか。


「ルイス、私は大丈夫ですわ」

「しかし!」

「今は貴方もいますでしょ?おかげで寒い冬は暖炉の火で温まることができます。ありがとう」

「…はい」


私は何もできない。
護衛騎士でもできることは限られている。



なのにお礼を言われて情けなくなった。


「私は悔しゅうございます」

「ルイス…」


誰よりも国を思い、尽くしてくださる方を冷遇するなんて。


私の怒りは消えなかった。


そんな中、アラクネ様が離宮に現れた。
婚約時代の時と変わらず声をかけられてきたが、声を聴くだけも嫌悪感が募る。


そして言ってしまいたくなる。


――この悪女が!

――聖女の皮を被った魔女め!


言いたいが必死で言葉を飲み込んだのだ。


それでも私に縋るような目を向けた彼女に軽蔑以外の感情は抱けなかったが、その翌日。


私はエリーゼ様の護衛騎士の任を解かれてしまった。


理由は未婚の男が王太子妃の住まう離宮に寝泊まりするのは外聞が悪いことだったが建前であることが解った。

その挙句迷惑な親切心をひけらかしあの馬鹿王子は私に縁談を持ってきたのだった。


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