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⑤
しおりを挟む聞きたくもないのに侍女達は黄色い悲鳴を上げていた。
「本当に素敵よね」
「薔薇の騎士様とエリーゼ様の結婚式」
下賜された哀れな妃の何がいいんだ。
聖教皇国で何の身分もなく貧しい生活を強いられているに決まっている。
そう思っていた。
なのに…
「結婚式の記事を見て、本当に素敵で」
「夫のアルバシア様も素敵で…私も騎士様の妻になりたい」
「でも大きな声で言ったら叱られるわ」
年若い侍女は自分達の発言がどれ程の不敬罪に値するか理解していない。
「かまわないわよ。侍女長は退職したし、侍女長補佐は病で領地に療養でしょ?聞けば宰相閣下も王宮を去って領地に引っ込んでいるし」
「そうね。アラクネ妃は引きこもられているし…跡継ぎもいない王家は終わりじゃない」
「本当にね。噂ではエリーゼ妃が原因で子ができないって言われてるけど。本当は陛下が原因だったなんて」
僕が原因?
そんなはずはない。
子供が出来ないのはエリーゼに原因があるから。
「聞けばエリーゼ妃は十年間避妊薬や毒薬を飲まされていたそうよ」
「子ができないようにでしょ?酷い話ね…だから罰が当たったのよ。先代国王は梅毒で余命僅からしいけど。誰も悲しまないでしょ」
「それを言うなら王太后陛下もでしょ?感染病の末期だなんて」
父上と母上が病?
そんな事僕は初耳だった。
なのに…
「そもそも赤字になったのはあの二人が浪費を続けたからでしょ?だかエリーゼ様を嫁がせ、国内でポーションを作らせ他国に輸入して収入を得たのでしょう?」
「なのに酷い話ね。陛下もエリーゼ様が嫁がなければ辺境伯爵が反旗を翻されていたかもしれないって話よ」
「本当に何所情報?」
「ふふん、秘密よ」
知りたくなかった事実を侍女達はペラペラ話し続けた。
そして最も聞きたくない言葉を言ったのだ。
「エリーゼ様は嫁いですぐに子を身ごもられたんでしょ?」
「あの国は隠しているけど、確からしいわ。結婚して一年も満たないのにね?これは確実よね」
「本当に使えない王よね。どうせこの国も終わりだけど」
「なら、給料だけ貰って辞めた方がいいわね」
「そうね」
二人の声が遠のいていく。
意識を保つの精一杯だった。
この現実を受け入れろというのか。
そんなことできるはずがない!
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