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⑨
しおりを挟む子も身ごもれな役立たずの妃は公の場から姿を消すことになった。
周りの陰口は酷くなる一方だけど、あの女は私を憎むこともしなかった。
その態度が不愉快だった。
もっと悲しみなさいよ!
もっと憎みなさいよ!
そう思っているのに、時々王宮内で私と顔を合わせても礼を尽くし、何も言わない。
王太子妃としての余裕か。
それとも自分は聡明な妃だからとでも言いたげだった。
だから見せつけるような態度を取った。
それでもあの女はすました表情をしているから、悪女になるようにしたてあげて殿下に縋るような態度を取れてば周りは私に同情した。
そんな中。
「本当に図太い方」
「私だったら精神的に病んでますわ」
「自害すればいいのに」
誰もが思うだろう。
元は王女であるのに、こんな扱いを受けながらも耐えるなんて頭がおかしいじゃないのかと思う。
でも、自害なんてさせない。
楽に死なせてやるものか。
苦しんで、苦しんで、死にたいと思っても死なせない。
一生苦しんで日陰の存在にいてもらわないと。
そう思ったのに、邪魔が入った。
魔王軍との戦争が終結した後に大戦の英雄でもある聖騎士が我が国の招待を受けたのだが。
その聖騎士はあろうことにあの女を庇った。
誰もがあの女に手を差し伸べなかったのに!
あの女の味方はすべて追いやったというのに!
「本当に大丈夫ですか」
「お気遣いありまとうございます」
特に毒薔薇の貴公子と呼ばれる男は本当に邪魔だった。
嫌がらせをする令嬢はあの男の毒薔薇で近づけなかった。
他にも氷の貴公子と呼ばれる聖騎士も睨みをきかせ、まるで私が仕組んでいる事を知っているかのようだ。
「この国では王太子妃に礼を尽くさないのか」
「えっ…」
「王族であり、未来の王妃陛下となる方に無礼が過ぎる」
「他国なら不敬罪で死刑だろう…いかにエリーゼ妃が慈悲深いと言えど、やっていいことと、悪い事の区別がつかないとは」
「つーかアンタら、性格悪すぎだろ。姫さんも王太子妃なんだからよ?不敬罪にしてしまえよ?」
なんなのこいつら!
英雄だからって調子に乗ってるんじゃないわよ!
あんな出来損ないを庇うんじゃないわよ!
イライラしながらも滞在期間は耐えるしかない。
そう、あと数日すればこいつらはいなくなり、あの女は孤立する。
戦争も終わり、あの女は本当の意味で行き場を失くす。
その時が好機だった。
けれど、私のシナリオはお幅に狂わされることとなるのだった。
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