寵妃にすべてを奪われ下賜された先は毒薔薇の貴公子でしたが、何故か愛されてしまいました!

ユウ

文字の大きさ
上 下
52 / 133

しおりを挟む




炎の渦が私達を囲む中、マクシミリアン様が剣て切り刻む。


「馬鹿め!そんな玩具で!」

「くそっ!」

炎を物理的攻撃は意味がない。
炎を完全に消すには、炎の出所を探す必要がある。


「何所?炎の出所は…」

「姫さん!」

炎が私を取り囲んでいく。

「このままあの小娘と同じように炎の呪いに苦しむがいい」

「うっ…」


熱い。
全身が熱くて声も出せない。

「愚かな小娘だ。このイフリートの炎を必死で抑え込もうなど…馬鹿だ!」


――違う。


「国に裏切らた哀れな小娘よ。意味がないとうのに」


――違う!


「くだらない誇り、正義感などで死ぬのだからな…精霊の炎で骨も残らぬようにあの小娘めもな!」


――違う!違う!



ルリ様の誇りはくだらなくない。


「…け…な…い」


あの人が長い年月耐えたのは強い誇りだ。
例え国に王族に裏切られてもその運命を受け入れ、恨むことではなく守ることを選んだのだから。


「姫さ…」


「取り消しなさい!」


これ以上ルリ様の侮辱は許さない。


「なっ…貴様!何故…」

「姫さん、髪と目の色が!」


気づくと私は炎の渦を消していた。



「黙って聞いていれば、無礼な事を…馬鹿はどっちですか!下級精霊風情が」


「人間風情が!灰になるがいい」


私は無意識のうちに炎を握りつぶし、心に言葉が浮かんだ。


「アクア・ビーズ!」


「炎が…馬鹿な!」


地面から水が迸り、炎は完全に消えた。


「これは効力な水魔法…嘘だろ」


「黒い炎よ!消えろ!」


水しぶきがイフリートを包み炎を飲み込んでいく。

「あがっ…炎が」


「今すぐ呪いを解きなさい。これが最後の警告です」

「これは…人間の粋を超えている。こんな馬鹿な事ありえない」


イフリートが小さな炎となり消えて行く。



「姫さん!止めろ…これ以上したらアンタの体が!」

「イフリートを…」

「あのおっさんはもう消えている。恐らく精霊の原型を保てなくなっているぜ」


「ほんと?」

「ああ」


じゃあ、もうルリ様は呪いで苦しむことはないの?


良かった…



「うっ!」

「姫さん!」


気持ち悪い。
体が針で刺されるように痛い。



「おい姫さん!」


マクシミリアン様の声が響くけど、意識が遠のいていった。


しおりを挟む
感想 123

あなたにおすすめの小説

一番でなくとも

Rj
恋愛
婚約者が恋に落ちたのは親友だった。一番大切な存在になれない私。それでも私は幸せになる。 全九話。

妹がいらないと言った婚約者は最高でした

朝山みどり
恋愛
わたしは、侯爵家の長女。跡取りとして学院にも行かず、執務をやって来た。婿に来る王子殿下も好きなのは妹。両親も気楽に遊んでいる妹が大事だ。 息詰まる毎日だった。そんなある日、思いがけない事が起こった。 わたしはそれを利用した。大事にしたい人も見つけた。わたしは幸せになる為に精一杯の事をする。

いつまでも甘くないから

朝山みどり
恋愛
エリザベスは王宮で働く文官だ。ある日侯爵位を持つ上司から甥を紹介される。 結婚を前提として紹介であることは明白だった。 しかし、指輪を注文しようと街を歩いている時に友人と出会った。お茶を一緒に誘う友人、自慢しちゃえと思い了承したエリザベス。 この日から彼の様子が変わった。真相に気づいたエリザベスは穏やかに微笑んで二人を祝福する。 目を輝かせて喜んだ二人だったが、エリザベスの次の言葉を聞いた時・・・ 二人は正反対の反応をした。

一年で死ぬなら

朝山みどり
恋愛
一族のお食事会の主な話題はクレアをばかにする事と同じ年のいとこを褒めることだった。 理不尽と思いながらもクレアはじっと下を向いていた。 そんなある日、体の不調が続いたクレアは医者に行った。 そこでクレアは心臓が弱っていて、余命一年とわかった。 一年、我慢しても一年。好きにしても一年。吹っ切れたクレアは・・・・・

最初から間違っていたんですよ

わらびもち
恋愛
二人の門出を祝う晴れの日に、彼は別の女性の手を取った。 花嫁を置き去りにして駆け落ちする花婿。 でも不思議、どうしてそれで幸せになれると思ったの……?

勝手に召喚して勝手に期待して勝手に捨てたじゃないの。勝手に出て行くわ!

朝山みどり
恋愛
大富豪に生まれたマリカは愛情以外すべて持っていた。そして愛していた結婚相手に裏切られ復讐を始めるが、聖女として召喚された。 怯え警戒していた彼女の心を国王が解きほぐす。共に戦場へ向かうが王宮に反乱が起きたと国王は城に戻る。 マリカはこの機会に敵国の王と面会し、相手の負けで戦争を終わらせる確約を得る。 だが、その功績は王と貴族に奪われる。それどころか、マリカは役立たずと言われるようになる。王はマリカを庇うが貴族の力は強い。やがて王の心は別の女性に移る・・・

王子の婚約者を辞めると人生楽になりました!

朝山みどり
恋愛
わたくし、ミランダ・スチュワートは、王子の婚約者として幼いときから、教育を受けていた。わたくしは殿下の事が大好きで将来この方を支えていくのだと努力、努力の日々だった。 やがてわたくしは学院に入学する年になった。二つ年上の殿下は学院の楽しさを語ってくれていたので、わたくしは胸をはずませて学院に入った。登校初日、馬車を降りると殿下がいた。 迎えに来て下さったと喜んだのだが・・・

今世は好きにできるんだ

朝山みどり
恋愛
誇り高く慈悲深い、公爵令嬢ルイーズ。だが気が付くと粗末な寝台に横たわっているのに気がついた。 鉄の意志で声を押さえ、状況・・・・状況・・・・確か藤棚の下でお茶会・・・・ポットが割れて・・・侍女がその欠片で・・・思わず切られた首を押さえたが・・・・首にさわった手ががさがさ!!!? やがて自分が伯爵家の先妻の娘だと理解した。後妻と義姉にいびられている、いくじなしで魔力なしの役立たずだと・・・・ なるほど・・・今回は遠慮なく敵をいびっていいんですわ。ましてこの境遇やりたい放題って事!! ルイーズは微笑んだ。

処理中です...