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②
しおりを挟む私を申し訳なさそうに見る目は普段のルリ様らしくない。
何時も堂々としていて凛々しい彼女にはこんな表情は似つかわしくない。
「姫…すまない」
「ルリ様が謝られることはありません」
「しかし!」
自己犠牲なんかじゃない。
これは私が望んだことなのだから。
何より。
「ムカつきました」
「え?」
「国の為だと言いながら一人にすべてを押し付ける何と愚かで情けない王族に」
「姫…」
私が他国のやり方に口を挟むのはおかしい。
だけど、犠牲にされた者の気持ちはどうなるの?
自分達だけ安全な場所にいて、何一つ顧みようとしない。
「私、結構怒ってますの」
「そうなのか」
「はい、これまで心を殺して生きてまいりましたが、ここにきてようやく心を取り戻しました」
かつて私は感情を持ってはならなかった。
国情勢の違和感を考えてはいけない状況にあった。
だけど胸の中でいつも変だと思っていた。
政治を担う者達は自分の保身しか守らず、世界の断りを乱して、世界の平和だと訴えながら犠牲者を前提とした戦略や、国民を犠牲にして貴族の生活を守ろうとする考えがおかしいと思っていた。
「イフリートにお説教をしてまいります。大丈夫です。いざという時はマクシミリアン様を盾にして逃げます」
「おぃぃ!何普通に俺を盾にしようとしてんだよ!」
「半分冗談です」
「半分本気かよ」
逃げることはしない。
でも、少しの冗談でルリ様を安心してもらいたい。
「ありがとう姫」
「ルリ様」
「どうか無事で戻ってきてくれ」
抱きしめられた時に私を抱く手が震えていた。
泣きたくても泣けないなんて悲しい。
こんなにも優しい人を死なせてはダメだ。
「では準備は良いか」
「はい!」
「エリーゼ!必ず無事で帰って来てくれ」
足元が光る中、アルバシア様にかけられた言葉に笑顔で返事をする。
「はい、必ず生きて戻ります」
「おい!マニゴルド、万一エリーゼの体に傷一つでも残してみろ!私の奥義で八つ裂きにしてやるからな!」
今…ルリ様に名前を呼ばれた?
今までは姫と呼ばれていたのに。
「お前ら!少しは俺を心配しろ…どわぁぁ!俺の体!」
「無駄口をたたくと魂と体が粉々になるぞ」
「こんのぉクソ爺!」
一瞬の出来事で私達は体から魂が抜けた状態で精神の世界に誘われた。
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