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戦後、国境を越え王都に向かう道のりで同じ光景を目にした。


「地方は酷いありさまだってのによ」

「貴族街は贅沢な暮らしぶりは変わらないようだな」

「見るに堪えない…」


被害を受けた国は復興活動の為に金策に苦労している。
なのにこの国は比較的被害が少ないにも関わらず王都の貴族は派手な暮らしを顧みない。


「被害は少なくとも辺境地では救援活動をしているというのに、王都は…」

「他の国・・・つーかこの国以外は水問題が起きて作物が悲惨らしいぜ?しかも戦後、魔物の亡骸から瘴気であふれて水が腐っちまったようだが…」

「対するこの国は水の心配はない。病にかかる民も少ないというのに」

戦争になり、自分の国も危険な状態になったら助けを乞うて来たが、戦時中この国は支援活動をしなかった。

北の辺境伯爵が自身の財産を投げ売りできる限りの援助をしてくれたが国が動いたわけじゃない。


「魔女っ娘達を見習えってんだ」

「変な言い方をするな」


通称魔女っ娘軍団。
魔法学園に通う平民の魔法使いの少女達を皮肉って呼ばれた。


まだ未熟な魔法使いで、しかも貴族達は平民が魔導士になれるはずがないとのことで馬鹿にした呼び方をしたのだ。


「ハッ、俺は将来魔女っ娘は化けると思うぜ。後方支援に関しても悪くねぇ…特に治癒魔法はかなりの質だ」

「ああ、攻撃魔法よりも結界、治癒が素晴らしあった。私の氷魔法でもあそこまでの攻撃を防げないだろう」


近年攻撃魔法こそが最大の武器だと言われているが、それは大きな間違いだ。
治癒魔法こそが魔法の基本で、今でも重宝されている。


しかし治癒魔法は傷は治せても病は治せないという欠点がある。


「ポーションに関してもそうだ。薬草師の腕が悪くねぇ」

「エリーゼ妃の努力の賜物だろう」


アグナレス王国の上級ポーションは元はマリンパレスから輸入だ。
彼らがあの国に目を付けたのは質の良い薬草と上級ポーションを欲した。


他にもマリンパレスは長い歴史があり、銀刺繍という技術がある。
数多の刺繍の技術の中で最も優れた刺繍で、その刺繍は加護が込められている。


呪いなどを跳ね返すと言われている。


その中でも聖花の造花が存在する。
その名の通り造花であるが、呪いを一度だけ浄化する効果がある。
他にも術者の洗脳などから守ってくれる。


他でも真似できない多くの技術。
その宝を手にしたかったのだろうが、簡単に技術を盗むなんてできるはずもない。


例え技術だけを盗んでも心のない品になる。

「腐った心でまともなポーションが作れるものか」


自らの手で何を生み出すことはどれだけ難しいか。

私は幼少期より毒薔薇や外敵を阻む植物を育てて来たからこそ解る。


心を失った人間が作った物で人を救うことができないということを。
アグナレス王国を陰から支えているのは紛れもなくエリーゼ妃なのだから。



「お前、本当に大丈夫なのかよ」

「何がだ」

「自覚してねぇの?マジで?」

「これ以上何も言うな。彼は自覚がない」


王宮が見え、マクシミリアンが呆れたように何かを言っていたが特に気にすることはなかった。



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