寵妃にすべてを奪われ下賜された先は毒薔薇の貴公子でしたが、何故か愛されてしまいました!

ユウ

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人と関わるのが苦手だというのは解った。
決して人嫌いというわけではないのだが、これまで他人と距離を置いてきたからこそなのか。


私はどうしていいか解らなかった。
新しい環境で生きようと覚悟を決めたけど、こんな泣きそうな顔をされたら何も言えなくなる。


でも本当にいいの?
このまま白い結婚を続け形だけの夫婦で。

「アルバシア様はその意味を理解されていますか」

「え?」

「私と白い結婚をすることで、この国にどういう影響を与えるか」

私が言えたことではないけ。
白い結婚をしたまま正式な夫婦になれなかった。

だけど状況が違う。
あの時は私は王女として嫁いだ。

でも今は?
下賜された妃と夫婦の契りを交わさないという意味を理解していない?

いや解らないのだ。

「私のような傷物を押し付けられたのがお嫌でしたら、ちゃんと教皇様にお伝えすべきです。可能でしたら他の方に下賜していただいても…もしくは平民の年配の方でも」

「何を言っているんだ!ダメに決まっているだろう!」

思わず大声をだされてしまった。


「いや、すまない。つい怒鳴ってしまって…だが」

「アルバシア様、私はこの国に骨を埋める覚悟で嫁いでまいりました。かつてあの国に嫁いだ時も同様でしたが」


王女として国を、民を守る為に義務だと思って嫁いだ。
だけど実際は何の役目も果たせなかった。

それでも自分にできることを精一杯果たしてきたつもりだった。


「私は貴方の言葉を聞きたいのです。貴方がどうしたいか、何を望んでいらっしゃるか」

「私の…望み」

「私の事を慮ってくださるのは嬉しいです。でも肝心の貴方の心を無下にしている」



言葉を重ねても分かり合えないこともある。
私とエルバート様は既に言葉では心を重ねることができない所まで来ていた。


でも、だからこそ。
私に誠実であろうとしてくださったこの方の心に寄り添いたい。


「一度のすれ違いが取り返しのつかないことになります。まずは貴方の心を言葉にしてくださいませ。貴方の体質云々はこの際どうでもよいのです」

「どうでもいい…」

「はい、毒を移すというならそれでもかまいません。ですが、大事なのは貴方のお気持ちです」


教皇様は心からアルバシア様を心配されている。
リーチェも同様だわ。


きっと聖騎士の皆さんは強い加護を持つが故にリスクを背負っているのかもしれない。
氷の騎士であるアクエリアス様も、黒騎士であるマクシミリアン様も炎を身に宿すルリチェンテ様も。

それぞれ苦悩があるはず。


その苦悩をすべて理解できるわけはない。
だって他人なのだから。

どんなに共感して解っているなんて言っても、その人の心をすべて理解しているなんて言うのは思い上がりで傲慢だから。



「私はずっと一人で…この毒で皆を守れるならと思っていた」

「はい」

「だが、長い間孤独は苦しくて…それでも誇りに思っていた」


静かにアルバシア様は己の心を言葉にしてくださった。
長い間孤独と戦い続け、敵国からは化け物だと言われながらも誇りを持っていた事。


吐き捨てるようにさらけ出した。


「他者を拒絶しなくてはならない。私が触れれば生き物は死ぬ…だから拒んだ」

「でも本当は人と関わりたかった?」

「ああ…」



冷たい人のでななくむしろ逆。
優し過ぎる人で、騎士でありながら誰よりも人としての基盤ができている人のように思えた。


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