22 / 133
6誓い
しおりを挟むそれから数日後。
聖地から少し離れた南の領地にて住居を移すことになった。
そこが私の住まいになる。
棘で囲まれた遺跡のような宮殿でかなり年季が入っており。
周りは薔薇で囲まれ、他にも植物があるのだけど、かなりのけもの道だ。
馬車も通るのは難しく通常は馬で移動するのだ。
その為他国からの侵入者を阻むことになるのだけど、宮を囲む棘は侵入者を許さないのだが…
「あの、棘が勝手に動いております」
「やはり貴女は問題なかったか」
「どういうことでしょう」
まるで生きているかのようだ。
「この地は狩りの女神アルテミスが守護する森だ。故にそこら中に森の精霊が姿を隠している」
「はい」
「だが、貴女は水の女神、アクアレーナの加護を持っている。故にだろう」
水の女神と森の女神は敵対関係にない。
むしろ協力体制にある故に私も敵意を受けていないそうだ。
「だが、アルテミスは処女女神だ。故に…」
なるほど、男と交わっている女性は阻まれるということになる。
「処女女神は潔癖だ。だから少し心配はあったんだが」
「そうですね…」
どうしよう。
私は結婚はしていたけど処女であることを言ってない。
だって白い結婚だったもの。
この反応からして勘違いをされている?
いや普通に考えて身綺麗のままであるなんてありえない。
言うべき?
言わざるべき?
私は迷った。
「姫…」
「私はもう姫ではありませんわ。貴方の妻になるのですよ」
「そうか、では敬語は無しにしよう」
何か言いたそうにしているアルバシア様は眉を下げた。
気のせいか手が震えている。
「その、今から酷な事を言う」
「何でしょう」
「貴女は私の毒体質は知っているな」
「はい」
噂では猛毒をその身に宿していると。
「私は幼少の頃から毒を身体に宿していた。それはこの国を守る為に毒薔薇で外敵を阻むためだ。その為にもより強い毒を宿す為に毒を体に入れている」
「えっ…」
「故に私の体は毒まみれだ。だからこそ私の触れる者はすべて毒で死ぬ…花ですら枯れてしまうんだ」
「ですが!」
もし本当にそうだとしたらアルバシア様は…
「私は生まれてすぐ毒の耐性があると知るや否や両親は私を森に捨てた」
「そんな!」
「それは正しいだろう。毒を身に宿した私は脅威でしかない…だからこそ同契するということは私の血を体内に入れることだ」
毒を私の体に入れる?
「肉体的な契りをしなくてはならない…それは貴女に酷だ」
この人は何所まで優しい人なのか。
もしかしてあの時私に触れようとしなかったのは傷つけない為?
そこまで考えてくれていたの?
でも、私は嫁いだ以上は…
「私は貴女以外に妻をめとる気はない。そもそも我が国では一夫多妻は重罪だ。元より私もそんな真似はできない」
「えっ…」
そうなの?
マリンパレスも一夫一妻制だったけど、アグナレス王国は一夫多妻だった。
「例え貴女と正式に契らなくとも私は貴女を守る覚悟だ…だから無理強いはしたくない」
この時私は教皇様の言葉、リーチェの言葉を思い出した。
なんて不器用な人。
同時にとてつもない義理堅い方なのだと。
そんな真似をしたら、後からお咎めを受けるだけで済まない。
万一、同盟にひびが入った時の事を考えると。
考えるとぞっとする。
同時にそこまで私を気遣ってくださっていることが痛々しく思った。
1,785
お気に入りに追加
3,943
あなたにおすすめの小説

妹がいらないと言った婚約者は最高でした
朝山みどり
恋愛
わたしは、侯爵家の長女。跡取りとして学院にも行かず、執務をやって来た。婿に来る王子殿下も好きなのは妹。両親も気楽に遊んでいる妹が大事だ。
息詰まる毎日だった。そんなある日、思いがけない事が起こった。
わたしはそれを利用した。大事にしたい人も見つけた。わたしは幸せになる為に精一杯の事をする。

いつまでも甘くないから
朝山みどり
恋愛
エリザベスは王宮で働く文官だ。ある日侯爵位を持つ上司から甥を紹介される。
結婚を前提として紹介であることは明白だった。
しかし、指輪を注文しようと街を歩いている時に友人と出会った。お茶を一緒に誘う友人、自慢しちゃえと思い了承したエリザベス。
この日から彼の様子が変わった。真相に気づいたエリザベスは穏やかに微笑んで二人を祝福する。
目を輝かせて喜んだ二人だったが、エリザベスの次の言葉を聞いた時・・・
二人は正反対の反応をした。

一年で死ぬなら
朝山みどり
恋愛
一族のお食事会の主な話題はクレアをばかにする事と同じ年のいとこを褒めることだった。
理不尽と思いながらもクレアはじっと下を向いていた。
そんなある日、体の不調が続いたクレアは医者に行った。
そこでクレアは心臓が弱っていて、余命一年とわかった。
一年、我慢しても一年。好きにしても一年。吹っ切れたクレアは・・・・・


勝手に召喚して勝手に期待して勝手に捨てたじゃないの。勝手に出て行くわ!
朝山みどり
恋愛
大富豪に生まれたマリカは愛情以外すべて持っていた。そして愛していた結婚相手に裏切られ復讐を始めるが、聖女として召喚された。
怯え警戒していた彼女の心を国王が解きほぐす。共に戦場へ向かうが王宮に反乱が起きたと国王は城に戻る。
マリカはこの機会に敵国の王と面会し、相手の負けで戦争を終わらせる確約を得る。
だが、その功績は王と貴族に奪われる。それどころか、マリカは役立たずと言われるようになる。王はマリカを庇うが貴族の力は強い。やがて王の心は別の女性に移る・・・

王子の婚約者を辞めると人生楽になりました!
朝山みどり
恋愛
わたくし、ミランダ・スチュワートは、王子の婚約者として幼いときから、教育を受けていた。わたくしは殿下の事が大好きで将来この方を支えていくのだと努力、努力の日々だった。
やがてわたくしは学院に入学する年になった。二つ年上の殿下は学院の楽しさを語ってくれていたので、わたくしは胸をはずませて学院に入った。登校初日、馬車を降りると殿下がいた。
迎えに来て下さったと喜んだのだが・・・

今世は好きにできるんだ
朝山みどり
恋愛
誇り高く慈悲深い、公爵令嬢ルイーズ。だが気が付くと粗末な寝台に横たわっているのに気がついた。
鉄の意志で声を押さえ、状況・・・・状況・・・・確か藤棚の下でお茶会・・・・ポットが割れて・・・侍女がその欠片で・・・思わず切られた首を押さえたが・・・・首にさわった手ががさがさ!!!?
やがて自分が伯爵家の先妻の娘だと理解した。後妻と義姉にいびられている、いくじなしで魔力なしの役立たずだと・・・・
なるほど・・・今回は遠慮なく敵をいびっていいんですわ。ましてこの境遇やりたい放題って事!!
ルイーズは微笑んだ。

ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる