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②
しおりを挟む国の利益の為に不要な妃を切り捨てるのは当然の事。
私はこの国に百害あって一利なしと誰もが覆っているのだから何故今更そんな表情をするのか。
「エリーゼを下賜する等、彼女は亡国とは言えど王女ですよ」
「何かを馬鹿な事。既に焼け野原となった国もない元王女にすぎん」
「だからと言って…」
まるで子供が親に駄々をこねるような行為だ。
こんな時こそアラクネ妃が立ち回るはずなのに、彼女も様子がおかしい。
「エルバート殿下、これは王命でございます。私は妃としてお国の為にこの身を捧げます。どうか私の事はお忘れください」
「エリーゼ!」
「どうかアラクネ妃とお幸せに」
嫌味ではなく心からの言葉。
今はもう愛情はないけど、過去を変えることはない。
エルバート殿下と過ごした時間は偽りじゃない。
私の中であるのだから。
「大義であった、我が国の為にその身を捧げ生きていくのだ」
「承知しました」
私は最後まで王女としての誇りを、そして王太子妃であったことを忘れず気高さを捨てずに終わらなくてはならない。
「エリーゼ姫を下賜すると同時に本日はもう一つ大事な報告がある」
「皆も知っての通り、私は退位する。その後に王太子であるエルバートが王位を継ぎ、アラクネ妃を正妃と名なる」
「これまで王太子を支えてくれたことを感謝しています。この場でアラクネ妃を王太子妃とし、その後戴冠式を行った後に王妃となることになります」
これは公の元で王太子妃となる事を決定したも同然だ。
「おめでとうございます王太子妃アラクネ様!」
「万歳!」
「聖女様!」
この場には貴族以外にも商人や記者もいる。
明日には報道されるかもしれない。
新たな王太子妃に関しても。
聖女が正式な王太子妃になるケースは宗教国以外では珍しいのだから話題になるだろうし。
同時に私の事も国民に知られるのでしょうね。
元王太子妃が他国に下賜されるなんて前代未聞だと面白おかしく書かれるかもしれない。
そうなると、こんな私を指示してくれた辺境貴族の方々にも申し訳なくなる。
私を支持してくれた国民だって少なくともいるのだから。
申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
だから余生はクラリス聖教皇国で祈りながら暮らそうと思った矢先の事だった。
「クラリス聖教皇国の代表としてお祝い申し上げます」
「おお、貴殿は!」
お祝いモードの中、一人足を踏み入れたのはアルバシア様だった。
何故このタイミングで…
「そなたは…」
エルバート殿下がアルバシア様を見て問うた。
「美しき姫を下賜していただいたことを心より感謝いたします。下賜された後は姫を大切にいたしますので」
「何…」
「えっ…どういうことですの?」
アルバシア様の言葉に私は固まった。
動揺するのはエルバート殿下とアラクネ妃も動揺しているようだった。
「貴殿があの毒薔薇の騎士だったか。ちょうどよいお似合いではないか」
「ええ、とってもお似合いですわ」
誉め言葉ではないのは解る。
仮にも相手は聖騎士様であるのにこんな無礼は許されるはずがないのに!
「この度聖教国への…」
「教皇猊下より、お言葉を賜っております。国の花とされエリーゼ姫を下賜していただけるなど光栄でございます。教皇猊下もお喜びになるでしょう」
「まぁ、そこまで気を使われなくてもいいのですよ」
「そうだ。まぁそなたは騎士に過ぎんからな」
この二人!
王宮で贅沢三昧をするだけで執務もろくにしていない癖に!
戦場で命をかけてくださった騎士様になんて無礼な!
これ以上は聞いていられなかった私は耐え切れず前にでようとしたがそれは叶わなかった。
『姫さん、動くなよ』
頭に中から声が聞こえたのだ。
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