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1価値のない妃
しおりを挟む後ろ盾のない妃など意味がない。
形だけの夫婦で毎日のように嫌味を言われるならば出家して人々の為に尽くす方がいい。
貴族の間では聖職者は名ばかりの寄生虫だと言うけど、そんなの一部でしかない。
「聖職者を侮辱することは多くの聖教国を侮辱する事なのに」
大帝国ですら聖教国を敵に回ることを恐れているというのに何時からあんな考えを持つようになったのか。
「女神様、私はこれからどうしたらよいのでしょうか」
離宮には祈りの間が置かれている。
かつてこの離宮には女神像が立てられていたが既にひびが入り瞳の亀裂は人々の信仰心がない故に女神が泣いているようにも見える。
「私はもう妃として役目を果たせぬのなら亡き王国の為に祈りたいのです」
祈りながら静かに暮らすことはそんなにいけないのか。
小さな教会では国からの援助はなく修道女たちが汗水流して働いたお金で食べている。
国が援助するのは大きな教会だけだ。
以前、王太子時代に援助が滞っていないことを知り、裕福で立派な教会から少し援助をと進言したが逆に世間知らずの偽善者だと罵倒を受けてしまった。
「あの一件からよね…司祭から睨まれたのは」
女が政治に口だすことは許されない。
王妃の立場ならまだしも、当時は王太子妃という立場だったから仕方ないのかもしれない。
だとしても許せなかったのだ。
「本来税金は国民の労働によるもの。彼らの大事な財産を公平に使うべきなのに」
援助を受けている教会は名ばかりの聖職者だった。
一部の聖職者が横領をしているというのは彼らの事なのに本来咎めるべき人間を咎めず、その日パン一つ満足に食べることができない聖職者からさらにお金をむしる取る行為をしているのに放置する行為。
離れた距離にいるようになって客観的に物事みれるようになるが、政治は清廉潔白ではいけないというが、私からすれば言い訳にしかならない。
国を潤す為に国民をだまし続けることは許されるのか。
「女神様、このままでは国はどうなりましょうか…心ある貴族は地方に送られ、進言した聖職者は戦場に送られるなど」
祈るだけしかできないエリーゼは、できることはほとんどなかった。
せめて王家と国民の心を繋ぐべく、王家から手紙を送ったのだ。
理不尽な理由で左遷された貴族達。
聖職者が戦場に送られ死した後悲しむ遺族に励ましの手紙送ったのだ。
ただし、私の名を伏せてアラクネ妃の名前だけど。
「まだ心ある貴族はいる。だけどこのままじゃ…」
外は戦争をしている。
だけど戦争しているからこそ身内の争いは目立たない。
他国とも協力体制を取っているから。
でも共通の敵がいなくなった時国はどうなるのだろうか。
そんな時だった。
王宮内で噂が流れた。
戦争が終わり、停戦となったのだ。
クラリス聖教皇国に各国の王は国に領土やお金を差し出した。
しかしアグナレス王国は領土もお金も支払うことを拒んだ。
その所為で大帝国アルセディアから抗議の声が上がったのだが、国王は一人の妃を下賜することで手を打ったのだ。
その所為で王宮内は困惑の声が上がったのだった。
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