とりかへばや物語 人は複雑すぎて、面倒くさい、
都が地震に見舞われ、東国で噴火が相次ぐなか、駿河守に娘が誕生した。娘の誕生に沸く駿河守邸だが、霊峰富士の女神から、「この娘には重大な使命があるから、結婚させてはならない」と命じられた。
娘の誕生から数ヶ月後、右大臣から「この女を正妻にしてほしいと」と、駿河守は高貴な女性と生まれて半年程の姫を押し付けられた。この女性、右大臣正室の妹で、うっかり右大臣が手を出して妊娠させてしまい、家に置くわけにもいかないので、信頼のおける者に託すことにしたのだ。天下の右大臣に逆らえず、駿河守は泣く泣く本来の妻を側室に、右大臣に押し付けられた妻子を正妻と嫡子とした。
任期が明けて都に戻ると、駿河守は受領から一気に参議にまで引き上げられた。右大臣の采配によるものだが、元駿河守からすれば余計な気遣いで、本来の妻子と受領生活を続けたかった。
富士姫は成長と共に、幽霊や物の怪を倒す力を身につけた。ある貴族の、怨霊に取り憑かれて死にかけた息子を全快させたことで、榊の参議邸は連続、物の怪を恐れる貴族たちに押しかけられた。
慎ましやかな駿河の参議の名ばかりの正室朱華の御方と対照的に、我儘いっぱいに育った桜姫。実は桜姫は朱華の御方の娘ではなく、右大臣正室が生んだ双子の片割れだった。右大臣家に残された双子の姉は、将来の中宮になるべく大切に育てられたが、入内手前で急死してしまう。そこで桜姫が身代わりに女御として入内することとなった。桜姫がいなくなったことで、朱華の御方は正室の座を本来の正室に返し、駿河の参議の実子は嫡子に戻った。
後宮という伏魔殿で生きるには、桜姫には知性も教養も足りなかった。後宮で孤立した桜姫は、帝の弟と密通して不義の子を宿した。それがきっかけとなり、桜姫の実母は自害、右大臣は出家して、右大臣家は傾いた。捨てられるように監禁され孤独となった桜姫は、富士姫の仲介によって、養母の朱華の御方に救い出された。不義の子は命令通り、誕生後1年で遠い東国の寺院に送られた。桜姫と朱華の御方は都を離れて、懐かしい駿河の国に住み着いた。
成長した富士姫は、自身の誕生の真の理由を知る。国を次々襲う天変地異の正体は、本来、玉座に座る資格のない帝のせいだった。神々は、隠された正統な皇位継承者を探し出し、帝を交代させる使命を富士姫に託したのである。
昔、殺害された皇太子と皇后の怨霊が御所に現れる。それがきっかけで、帝は自身に皇位継承の資格がなかったことを知る。ショックだったが、国を思う心は本物だったので、富士姫の皇位継承者のすり替え計画に協力することとなった。その協力者として中宮、左大臣、その他が加わった。
富士姫が見つけ出した皇位継承権を持つ赤子を、中宮は実子として育て上げ、ようやく正統な血統の新たな帝を立てることに成功した。
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