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1 私が私を見つけるまでの日々
8 浮き立つような日常の終わり
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そうか! 自分から会いにいけばいいのか!
それから、お母さまやアイリーン姉さまの目を盗んで、ブラッドリー様の商会に通った。家令や馬車を出してくれる御者や付き添ってくれる侍従から、お母さまに話が漏れていることはないようで、ほっとした。それからもせっせとエリック様のいる商会へと通った。
エリック様は自分がいつも商会にいるわけではないからと、自分の予定をまとめた紙をくれた。リリアンはそれを家令に渡して予定を調整してもらった。家令は相変わらず表情は変わらない。マルティナ姉様のドレスを直した時も、憔悴したマルティナ姉さまにブラッドリー様が会いにきた時も、お母さまやお父さまに告げ口することはなかった。リリアンがお母さまにぶたれたりしている時にかばったりしてくれるわけではないので、リリアンの味方ではないのかもしれないが、お母さまの味方でもないようだ。ただ、お願いをすると可能な限り聞いてくれる。それにリリアンは甘えることにした。
エリック様のお仕事について話を聞くだけでは、よくわからなかったけど、ブラッドリー様の商会でエリック様にデザイン画を見せてもらったり、ドレスを作る工程を見学させてもらって、はじめて見る世界に胸がわくわくした。
これだ!ってお腹の底から思ったの。
私もドレスや服のデザインがしたい! エリック様のようにそれを仕事にして生きていたいって思ったの。
昔から、ドレスや服の色の組み合わせとかを考えるのが好きだった。文字や数字より色や形の方に興味があった。エリック様に会って、仕事風景を見せてもらって、エリック様がスケッチブックやペンをプレゼントしてくれてから、自分の中からどんどんどんどん、アイディアが浮かんできて、ひたすらに描き続けた。
描きためたデザインともいえない、拙い絵をエリック様は褒めてくれて、よくできたものをお人形さんサイズで再現して作ってプレゼントしてくれたりした。
リリアンがデザインに夢中になっている間に、マルティナ姉さまは一人、勉強に生徒会にと学園でがんばっていたようだ。
◇◇
「リリアン、あなた学園の入学試験だめだったわ。学園に通えないくらい程度が低いみたいよ。わかる? 貴族ならみんな通う学園にあなた通えないのよ!」
入学試験を受けた結果、学園から入学を断られた。そのことを久々に話しかけられたお母さまから金切声で伝えられる。なんとなく、ずっとブラッドリー様の商会でエリック様にデザインのことを教わる日々が続くと思っていたから、目の前が真っ暗になった。
貴族が通う学園に通えなかったら、リリアンはどうなるのだろう?
「あなたって子は、そこまで出来が悪かったの! 貴族の通う学園に通えないなんて、そんな話聞いたことないわ! これがどんなに恥ずかしい事かわかる! あなたの頭は空っぽなの? リリアン!!」
お母さまはすごい形相でリリアンに詰め寄って、リリアンの肩を両手でつかんで揺さぶる。その力があまりに強くて、リリアンは呼吸ができなくなった。
「せっかくアイリーン並みに可愛い顔に育てたのに……。この出来損ないが! 伯爵家の恥だわ! こんなことだと婚約も難しいわね……」
肩から顔に両手を移動させたお母さまはすごい力でリリアンの顔をつかんでくる。
「痛い……痛いです、お母さま……」
「うるさいっ! 口答えするな!」
突然解放されたかと思ったら、頬に平手打ちが飛んでくる。そうだった。お母さまに怒られるときは言葉を発してはいけないんだった。久々のことに忘れていた。
「……こうなったら、周りにバレる前にリリアンを家から出すしかないわね……」
荒い呼吸を繰り返しながら、お母さまの手の中で綺麗な扇がギリギリと引き絞られ変形していくのを見ていた。
嫌な予感がする……お母さまの暗い表情を見て、リリアンも憂鬱な気持ちになった。
それから、お母さまやアイリーン姉さまの目を盗んで、ブラッドリー様の商会に通った。家令や馬車を出してくれる御者や付き添ってくれる侍従から、お母さまに話が漏れていることはないようで、ほっとした。それからもせっせとエリック様のいる商会へと通った。
エリック様は自分がいつも商会にいるわけではないからと、自分の予定をまとめた紙をくれた。リリアンはそれを家令に渡して予定を調整してもらった。家令は相変わらず表情は変わらない。マルティナ姉様のドレスを直した時も、憔悴したマルティナ姉さまにブラッドリー様が会いにきた時も、お母さまやお父さまに告げ口することはなかった。リリアンがお母さまにぶたれたりしている時にかばったりしてくれるわけではないので、リリアンの味方ではないのかもしれないが、お母さまの味方でもないようだ。ただ、お願いをすると可能な限り聞いてくれる。それにリリアンは甘えることにした。
エリック様のお仕事について話を聞くだけでは、よくわからなかったけど、ブラッドリー様の商会でエリック様にデザイン画を見せてもらったり、ドレスを作る工程を見学させてもらって、はじめて見る世界に胸がわくわくした。
これだ!ってお腹の底から思ったの。
私もドレスや服のデザインがしたい! エリック様のようにそれを仕事にして生きていたいって思ったの。
昔から、ドレスや服の色の組み合わせとかを考えるのが好きだった。文字や数字より色や形の方に興味があった。エリック様に会って、仕事風景を見せてもらって、エリック様がスケッチブックやペンをプレゼントしてくれてから、自分の中からどんどんどんどん、アイディアが浮かんできて、ひたすらに描き続けた。
描きためたデザインともいえない、拙い絵をエリック様は褒めてくれて、よくできたものをお人形さんサイズで再現して作ってプレゼントしてくれたりした。
リリアンがデザインに夢中になっている間に、マルティナ姉さまは一人、勉強に生徒会にと学園でがんばっていたようだ。
◇◇
「リリアン、あなた学園の入学試験だめだったわ。学園に通えないくらい程度が低いみたいよ。わかる? 貴族ならみんな通う学園にあなた通えないのよ!」
入学試験を受けた結果、学園から入学を断られた。そのことを久々に話しかけられたお母さまから金切声で伝えられる。なんとなく、ずっとブラッドリー様の商会でエリック様にデザインのことを教わる日々が続くと思っていたから、目の前が真っ暗になった。
貴族が通う学園に通えなかったら、リリアンはどうなるのだろう?
「あなたって子は、そこまで出来が悪かったの! 貴族の通う学園に通えないなんて、そんな話聞いたことないわ! これがどんなに恥ずかしい事かわかる! あなたの頭は空っぽなの? リリアン!!」
お母さまはすごい形相でリリアンに詰め寄って、リリアンの肩を両手でつかんで揺さぶる。その力があまりに強くて、リリアンは呼吸ができなくなった。
「せっかくアイリーン並みに可愛い顔に育てたのに……。この出来損ないが! 伯爵家の恥だわ! こんなことだと婚約も難しいわね……」
肩から顔に両手を移動させたお母さまはすごい力でリリアンの顔をつかんでくる。
「痛い……痛いです、お母さま……」
「うるさいっ! 口答えするな!」
突然解放されたかと思ったら、頬に平手打ちが飛んでくる。そうだった。お母さまに怒られるときは言葉を発してはいけないんだった。久々のことに忘れていた。
「……こうなったら、周りにバレる前にリリアンを家から出すしかないわね……」
荒い呼吸を繰り返しながら、お母さまの手の中で綺麗な扇がギリギリと引き絞られ変形していくのを見ていた。
嫌な予感がする……お母さまの暗い表情を見て、リリアンも憂鬱な気持ちになった。
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