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【番外編】side ダレン③ 全てを失った日
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そして迎えた成人の儀式の当日。
ルナは相変わらず棒っきれのように細いが、それも一興だろう。
前日に、成人の儀式の夜はダレンの家に来るようにしっかりと釘を刺した。
ルナには村からも、ダレンからも逃げる手段も、生きていく術もないはずだ。それなのに、ダレンはざわざわとした胸騒ぎを感じた。
成人の儀式の会場で、村長と婚約者のアビゲイルと上座に座りながら、入場したルナを見て、思わず舌打ちする。ルナははじめてこの村で人目にさらされてその儚い美しさを皆に知らしめてしまった。早く囲って手をつけないと、横からかっさらわれるかもしれない。ダレンは儀式の間もイライラと貧乏ゆすりをし、焦りに苛まれた。隣の婚約者が不機嫌な顔をしているのも気づかずに。
ルナは、儀式が終わって、宴がはじまっても、宴の雑事をする女達のいる場所にいるのでなかなか声をかけられない。焦れたダレンは、女達の輪の中にいる、ルナに声をかけた。人前で声をかけないようにしていたので、周りにいた女達は驚いた眼を向けてくる。
その時には焦りと苛立ちが最高潮に達していたダレンは、適当な事を言って、その輪から強引にルナを連れ出した。腕を引っ張って、引きずるようにルナを連れて行く。人のいない方へ。人のいない方へ。
その途中、婚約者から引き留められたので、適当に言いくるめておざなりにその頬にキスをする。後ろを振り向く事もなく、再びルナの腕を強くひく。
早くわからせなければ。
ルナの世界にはダレンしかいないのだ。
ダレンしか必要ないのだ。
だから、急に自分の指がルナの腕から引きはがされた時、呆然とした。その衝撃で小柄で軽いルナは後ろへ吹き飛んでいた。
今までで一番強い力を紫の瞳に宿し、滔々とルナの話す言葉はダレンの脳裏をすり抜けていく。
は? 村から出て行く?
俺の事がいらない?
俺はただの他人で、苦手で嫌い?
なんとか単語だけを拾いあげるけど理解が追いつかない。
俺の事が嫌いだろうがどう思おうが、ルナは俺のものだ!!!
逃げるなんて許さない!!!
怒りが全身を駆け巡った。その衝動のままにルナに襲い掛かろうとした時に、逆に自分が吹き飛ばされた。
しかも、仰向けに無様にひっくり返ったまま、蛙のように手足を氷で地面に縫い付けられる。
自分をこんな惨めな状態にして、さらに愛おしそうにルナを抱きしめている得体の知れない優男に殺意がわく。どうやらこの村では馴染みのない魔術が使えるらしい。動けないもどかしさと、ルナをその腕におさめている光景にギリギリと憎しみがわいてくる。こんなひょろっとした女みたいな奴、腕力だったら絶対に負けないのに。魔術さえなければ、その細い首を一度に締め上げられるのに。
しかし、男の魔術が思ったより強力で、手足がなくなるという宣告に焦って、ルナに助けを求めると、逆にこれまでの俺のルナに対する心情や悪辣な行為がルナに筒抜けであったことを知る。
ルナ…… ルナ…… 見捨てないでくれ。
怒りと情けなさと、それでも許してほしい気持ちとでぐちゃぐちゃになる。涙があふれて止まらない。
そして、ルナは、いなくなった。
俺は狂ったように一晩中、村を走り回って、ルナやルナの痕跡を探したけど見つからなかった。まるで、この村に初めからルナという存在がいなかったかのように。
そして、俺は婚約者も友達も村人からの信頼も全てを一晩でなくした。
ルナは相変わらず棒っきれのように細いが、それも一興だろう。
前日に、成人の儀式の夜はダレンの家に来るようにしっかりと釘を刺した。
ルナには村からも、ダレンからも逃げる手段も、生きていく術もないはずだ。それなのに、ダレンはざわざわとした胸騒ぎを感じた。
成人の儀式の会場で、村長と婚約者のアビゲイルと上座に座りながら、入場したルナを見て、思わず舌打ちする。ルナははじめてこの村で人目にさらされてその儚い美しさを皆に知らしめてしまった。早く囲って手をつけないと、横からかっさらわれるかもしれない。ダレンは儀式の間もイライラと貧乏ゆすりをし、焦りに苛まれた。隣の婚約者が不機嫌な顔をしているのも気づかずに。
ルナは、儀式が終わって、宴がはじまっても、宴の雑事をする女達のいる場所にいるのでなかなか声をかけられない。焦れたダレンは、女達の輪の中にいる、ルナに声をかけた。人前で声をかけないようにしていたので、周りにいた女達は驚いた眼を向けてくる。
その時には焦りと苛立ちが最高潮に達していたダレンは、適当な事を言って、その輪から強引にルナを連れ出した。腕を引っ張って、引きずるようにルナを連れて行く。人のいない方へ。人のいない方へ。
その途中、婚約者から引き留められたので、適当に言いくるめておざなりにその頬にキスをする。後ろを振り向く事もなく、再びルナの腕を強くひく。
早くわからせなければ。
ルナの世界にはダレンしかいないのだ。
ダレンしか必要ないのだ。
だから、急に自分の指がルナの腕から引きはがされた時、呆然とした。その衝撃で小柄で軽いルナは後ろへ吹き飛んでいた。
今までで一番強い力を紫の瞳に宿し、滔々とルナの話す言葉はダレンの脳裏をすり抜けていく。
は? 村から出て行く?
俺の事がいらない?
俺はただの他人で、苦手で嫌い?
なんとか単語だけを拾いあげるけど理解が追いつかない。
俺の事が嫌いだろうがどう思おうが、ルナは俺のものだ!!!
逃げるなんて許さない!!!
怒りが全身を駆け巡った。その衝動のままにルナに襲い掛かろうとした時に、逆に自分が吹き飛ばされた。
しかも、仰向けに無様にひっくり返ったまま、蛙のように手足を氷で地面に縫い付けられる。
自分をこんな惨めな状態にして、さらに愛おしそうにルナを抱きしめている得体の知れない優男に殺意がわく。どうやらこの村では馴染みのない魔術が使えるらしい。動けないもどかしさと、ルナをその腕におさめている光景にギリギリと憎しみがわいてくる。こんなひょろっとした女みたいな奴、腕力だったら絶対に負けないのに。魔術さえなければ、その細い首を一度に締め上げられるのに。
しかし、男の魔術が思ったより強力で、手足がなくなるという宣告に焦って、ルナに助けを求めると、逆にこれまでの俺のルナに対する心情や悪辣な行為がルナに筒抜けであったことを知る。
ルナ…… ルナ…… 見捨てないでくれ。
怒りと情けなさと、それでも許してほしい気持ちとでぐちゃぐちゃになる。涙があふれて止まらない。
そして、ルナは、いなくなった。
俺は狂ったように一晩中、村を走り回って、ルナやルナの痕跡を探したけど見つからなかった。まるで、この村に初めからルナという存在がいなかったかのように。
そして、俺は婚約者も友達も村人からの信頼も全てを一晩でなくした。
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