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4 三姉妹のハズレだった私の再生
7 誕生日パーティー②
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マルティナの誕生日パーティーはスコールズ家で行われていたアイリーンやリリアンの誕生日会ほど盛大でも豪華でもないけど、家族の笑顔と温かさに溢れていた。
マルティナは今まで生きてきた中で言われた分よりたくさんのおめでとうとプレゼントをこの一日でもらった。
人生ではじめて生まれてきてよかったと思える誕生日だ。
あの国にいた時の私にはきっと信じられないだろうな。
今、傍にいる血のつながった家族はリリアンだけだ。
ブラッドリーをはじめとしたここにいる人たちは一かけらも血が繋がっていない。でも、この人たちが私の家族ですって胸をはって言える。
まだ、会って日も浅いけど。まだ、完全に心を開けているわけでもないけど。でも、信頼できる温かい人達。胸がいっぱいになったマルティナは、高揚する自分を落ち着かせようとバルコニーで一人、夜空を眺める。
「主役がどうしたの?」
「なんだか胸がいっぱいで。誕生日を祝ってもらうってはじめてだから」
三人掛けのベンチに寄り添うようにしてブラッドリーが座る。二人の間に隙間はない。二人で無言でしばし夜空に瞬く星を眺める。
「ブラッドリーの卒業パーティーの時の星空も綺麗だったね」
祖国にいた時のことが遠い昔のことのように思える。あの時は、こうしてブラッドリーと気持ちを通い合わせて、また星空を見れるなんて思ってもいなかった。
「マルティナ、愛してる」
ふいに抱きしめられて、ブラッドリーの大きな体に包まれて、マルティナは幸せを感じた。
「ブラッドリー、私も愛してる」
ずっと言いたかった言葉がするっと出てくる。ブラッドリーからやさしい口づけが降ってくる。
「マルティナ、結婚しよう」
「えっ」
ブラッドリーとお互い、気持ちがあることは、態度やその目線でなんとなく感じてはいたし、今朝、言葉で気持ちが通じていることを知った。それでも、いきなりの提案に、マルティナは言葉に詰まる。マルティナが難しい顔をしていると、ブラッドリーに額の皺をのばされる。
「ははっ。マルティナは考えていることが筒抜けだな。マルティナのことだから、恋人同士になって関係性を育んで、自立してからって思ってるんだろ? でも、俺は我慢できない。マルティナ、家を出てエミリーと一緒に暮らすつもりなんだよね? 一緒に暮らすの、俺じゃダメかな? 毎日、マルティナの顔が見たいし、一緒に暮らしたい。ダメかな?」
「ふふふ、私がブラッドリーのお願いを断れたことがある?」
「これから一緒にご飯を食べて、一緒に眠って、仕事をして、いろいろな場所に行こう。たくさんの景色を見て、経験して、一緒に楽しんで笑って暮らそう。
もちろんそれだけじゃなくって、マルティナが困った時も、寂しい時も辛い時も、ずっと隣にいたいんだ」
「ありがとう、ブラッドリー」
ブラッドリーと家族になる。
楽しさも悲しさもいいことも悪い事も一緒に味わって生きていく。
マルティナの中にあたたかい気持ちが広がる。
ああ、家族って色々な形があって、正解はないけど、きっとブラッドリーと一緒なら楽しい。
それだけは断言できる。
◇◇
「あーやっとくっついた。あの二人まだつきあってなかったのよ、信じられる?」
「まぁ、マルティナちゃんは家族のことで色々あったから、恋愛どころじゃなかったのよ。あと、ブラッドリーがマルティナちゃんが大事すぎて、慎重になりすぎちゃったんでしょ」
窓からバルコニーにいる二人を眺めながら、エミリーがつぶやく。隣でワインを味わいながら、エリックがしたり顔で補足する。
「くっついたら、結婚まで早そうねー」
「そうだな、俺らの結婚と被らないように調整しないとだな……いっそのこと合同でするか?」
エミリーとエリックが話している所に、レジナルドが割り込む。
「は? 私達って結婚するの?」
「ああ。枷つけておかないと、すぐにどっか行っちゃうからな。事実婚でいいなんて言わせないから」
「えー聞いてないーーー!!!」
「ああ。プロポーズはこれからするから。ということで、エリック、俺らもちょっとはずすわ」
「ハイハーイ、ごゆっくり。はー結婚式が二組か……忙しくなるわねー」
「エリック、マルティナねーさま見なかった?」
エリックがウェディングドレスの算段をしていると、リリアンが飛び込んでくる。
「あーちょっとお取込み中だから、あっちでケーキでも食べながら、ウェディングドレスのデザインでも考えましょ」
「えー誰のドレスですか? 楽しみだなぁ」
バルコニーが見える窓からリリアンの視線を離すようにエリックは誘導した。
マルティナは今まで生きてきた中で言われた分よりたくさんのおめでとうとプレゼントをこの一日でもらった。
人生ではじめて生まれてきてよかったと思える誕生日だ。
あの国にいた時の私にはきっと信じられないだろうな。
今、傍にいる血のつながった家族はリリアンだけだ。
ブラッドリーをはじめとしたここにいる人たちは一かけらも血が繋がっていない。でも、この人たちが私の家族ですって胸をはって言える。
まだ、会って日も浅いけど。まだ、完全に心を開けているわけでもないけど。でも、信頼できる温かい人達。胸がいっぱいになったマルティナは、高揚する自分を落ち着かせようとバルコニーで一人、夜空を眺める。
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「なんだか胸がいっぱいで。誕生日を祝ってもらうってはじめてだから」
三人掛けのベンチに寄り添うようにしてブラッドリーが座る。二人の間に隙間はない。二人で無言でしばし夜空に瞬く星を眺める。
「ブラッドリーの卒業パーティーの時の星空も綺麗だったね」
祖国にいた時のことが遠い昔のことのように思える。あの時は、こうしてブラッドリーと気持ちを通い合わせて、また星空を見れるなんて思ってもいなかった。
「マルティナ、愛してる」
ふいに抱きしめられて、ブラッドリーの大きな体に包まれて、マルティナは幸せを感じた。
「ブラッドリー、私も愛してる」
ずっと言いたかった言葉がするっと出てくる。ブラッドリーからやさしい口づけが降ってくる。
「マルティナ、結婚しよう」
「えっ」
ブラッドリーとお互い、気持ちがあることは、態度やその目線でなんとなく感じてはいたし、今朝、言葉で気持ちが通じていることを知った。それでも、いきなりの提案に、マルティナは言葉に詰まる。マルティナが難しい顔をしていると、ブラッドリーに額の皺をのばされる。
「ははっ。マルティナは考えていることが筒抜けだな。マルティナのことだから、恋人同士になって関係性を育んで、自立してからって思ってるんだろ? でも、俺は我慢できない。マルティナ、家を出てエミリーと一緒に暮らすつもりなんだよね? 一緒に暮らすの、俺じゃダメかな? 毎日、マルティナの顔が見たいし、一緒に暮らしたい。ダメかな?」
「ふふふ、私がブラッドリーのお願いを断れたことがある?」
「これから一緒にご飯を食べて、一緒に眠って、仕事をして、いろいろな場所に行こう。たくさんの景色を見て、経験して、一緒に楽しんで笑って暮らそう。
もちろんそれだけじゃなくって、マルティナが困った時も、寂しい時も辛い時も、ずっと隣にいたいんだ」
「ありがとう、ブラッドリー」
ブラッドリーと家族になる。
楽しさも悲しさもいいことも悪い事も一緒に味わって生きていく。
マルティナの中にあたたかい気持ちが広がる。
ああ、家族って色々な形があって、正解はないけど、きっとブラッドリーと一緒なら楽しい。
それだけは断言できる。
◇◇
「あーやっとくっついた。あの二人まだつきあってなかったのよ、信じられる?」
「まぁ、マルティナちゃんは家族のことで色々あったから、恋愛どころじゃなかったのよ。あと、ブラッドリーがマルティナちゃんが大事すぎて、慎重になりすぎちゃったんでしょ」
窓からバルコニーにいる二人を眺めながら、エミリーがつぶやく。隣でワインを味わいながら、エリックがしたり顔で補足する。
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