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1 どうにもならない現状
7 ドレスのリメイク
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やっとの思いで、姉の生徒会長の仕事の棚卸をして、生徒会の仕事がスタートしたかと思ったのに、姉の無茶振りにより、マルティナは更に忙しくなった。
生徒会長の仕事の棚卸をしたら、手を引くつもりだったのに、結局、想定外のイベントの発生とマルティナに仕事を押し付けろと言わんばかりの姉の物言いに、生徒会の仕事に関わらざるをえなくなった。
ただ、ずっと一人で抱え込んでいた今までと違って、引き続きブラッドリーとエリックと協力して生徒会の仕事をしていくことになったので、気分的にも楽だった。誰かと協力して物事を成し遂げたことがなかったので、話し合い、お互いに負担しあい進めていく楽しさも知った。
ブラッドリーの提案で相変わらず昼休憩も、生徒会室でとっている。エリックは顔が広く、クラスの友達との交流もあるので、週の半分くらいの参加率だ。
授業後は、週に一回くらいは他の生徒会役員が顔を出すが、毎日いるのはブラッドリーとエリックとマルティナだけで、三人で粛々と仕事を進めていった。
ブラッドリーは面倒見がよく、最高学年になって難易度の上がった姉の範囲の勉強を見てくれたり、昼食時に、マルティナに果物や菓子を差し入れてくれた。
はじめは遠慮していたが、結局押しの強さに負けて受け取ることになるので、最近は素直に受け取っている。
今日の昼食は、エリックも来ていて三人だ。
「なぁ、マルティナ。確かに生徒会の仕事増えたけど、それにしても顔色悪くないか?」
「……もうすぐ、姉の誕生日パーティーがあって、ドレスを手直ししないといけなくて……」
「は? 手直し? 自分で? ドレスメーカーがするもんじゃないの?」
「違うの。私のドレスは作ってもらえないから、姉のお下がりのドレスをサイズを直して着ているの。いつも、姉が私に下げるドレスを決めるのがギリギリで……手直しするのもけっこう時間がかかるから、結局、睡眠時間を削るしかなくて……」
ブラッドリーは、いつもマルティナに踏み込んだことを聞いておいて、マルティナの処遇に痛みを感じた顔をする。そんな顔をするくらいなら聞かなければいいのに。マルティナの違和感を見つけると、まっすぐに切り込んでくる。
「伯爵家がドレスを作れないくらい困窮しているわけじゃないんだよな?」
「ええ。母はドレスどころか装飾品から靴まで、完璧にそろえているし、姉にもドレスや宝飾品を十分に買い与えているわ。さらに、姉は公爵家の婚約者からドレスや宝飾品が送られてくるの。妹も毎回ではないけど、作ってもらっているし。まぁ、私はドレスが映える容姿でもないし、姉とは年も近いし、仕方ないの。ね、そんなことよりガーデンパーティーの事考えないと。やることも課題も山積みじゃない」
「……なーエリック、手貸してくんない?」
「んもー仕方ないわね。貸し一つね。利子は恐ろしい勢いで増えてくから覚悟なさいよ」
「……マルティナ、ちょっと、そのドレス預かれないかな?」
「は?」
◇◇
その日の授業後、姉も母も所要で不在とわかっていたので、とりあえずドレスを実際に見てもらうことにした。ブラッドリーの意図はわからないけど、納得しないと引かないことは知っていた。
こんな形で二人を家に招くことになるとは思わなかったとマルティナは遠い目をする。
突然、異国の生徒を家に連れてきたことに、家令は一瞬驚いていたが、二人が学園の制服を着ていることと、貴族より貴族然とした整った容姿をしているため、すんなり通された。
「前にちらっと話したけど、私、隣国でドレスメーカーを姉と立ち上げていて、ドレスや服飾のデザイナーしてるのよね。普段はデザイン専門なんだけど、針を持つところからはじめたから、服やドレスは一通り作れるのよ」
「まぁ、こんなやつだけど、腕は確かなんだ」
ブラッドリーやエリックに関して、驚くことはもうないと思っていたけど、まだまだ引き出しはたくさんあるらしい。マルティナにはエリックがドレスのデザインの仕事をしていることと、自分の直さなければいけないドレスのつながりがわからないけど。
「で、で、で、ドレスはどこにあるのーーーー?」
初対面の時には怒涛の勢いで話しかけてきたエリックだけど、その後一緒に時間を過ごすようになって、ブラッドリーが話すばっかりで、エリックが話すことはあまりなかった。そのエリックが普段見せないような鬼気迫った表情でマルティナに迫る。その勢いに押されるように、マルティナの自分のガラガラの衣装部屋に案内する。
「えええええーー壊滅的に似合ってない! チェンジ!! えっないの? これしかないの? …もーこの色味がそもそも、合ってないのよう。なによ、凹まないで。マルティナちゃんに似合ってないだけで、マルティナちゃんが悪いわけでもドレスが悪いわけでもないわよ」
ドレスを見たエリックの絶叫が響き渡った。咎められたような気がしてうつむくと、すかさず、エリックからのフォローが入る。いつもの十倍は早口で話していて、口をはさめない。
「んーサイズもお胸が余っちゃってるし、肩のラインもなんか違うのよねーーあーー腕がなる」
エリックがドレスを細かいところまでチェックして、ブツブツとなにやらつぶやき、一人の世界に入ってしまったので、お茶の用意をしようと気をとりなおす。
「ねーさまーーーあーそびーましょーー」
バーンと扉が開く。
また、空気を読まない人が現れた。母と姉の予定を思い出すのに手一杯で、妹のことを忘れていた。
「あらー、かわいい子猫ちゃんがもう一匹♪」
「マルティナ姉さまのお友達? 私、リリアンっていうの」
一応、思い出したかのようにカーテシーをする。カーテシーは及第点だが、発言内容は淑女として失格だ。
「マルティナ姉さま、ドレスかわいいね。でも、マルティナ姉さまに似会ってない。なんで、マルティナ姉さまは新しいドレス、買ってもらえないの? マルティナ姉さまはもっとシュッとしてて、深い色のが似合うのに!」
「あーら、アナタ見る目あるじゃなーい。そうなの、マルティナちゃんにはこんなパキッとしたピンクのフリフリキラキラのドレスじゃなくって、もっとシンプルで深みのある色のドレスのが似合うの。
せっかく可愛い顔してて、スタイルもスレンダーなのに、素材の無駄遣い! はー、もっと似合うドレス着せたいわぁ」
突撃してきたリリアンにあまり驚くこともなくエリックは普通に会話している。妹をブラッドリーとエリックに紹介する隙も無い。
「そういえば、あんたんとこで立ち上げたレンタルドレスでなんとかしたらどうなの?」
ずっと静かに様子を見守っていたブラッドリーにエリックが声をかける。
「ああ、その手があったか……」
「ごめんなさい、ブラッドリー。レンタルドレスにお金を出せないんです。エリック、ドレスのリメイクも、お金を払えないので……二人ともわざわざ家にまで出向いてもらって申し訳ないけど、ごめんなさい……」
やっとブラッドリーの意図がわかって、申し訳なくて、自分が惨めで情けなくてマルティナは顔が上げられない。
「はーいはーいはーい。理解理解。大丈夫。経費はブラッドリーから分捕るから、マルティナちゃんは心配ご無用。あ、アタシと恋人になるならぴったり似合うドレス、プレゼントしちゃうわよ!」
「だから、おまえは…」
「えーこのお姉さん、マルティナ姉さまのコンヤクシャなの?」
「違う。違う。ただの同級生だ!!!」
エリックとリリアンとブラッドリーの混とんとした会話のどこから訂正していいかわからず、口をはさめないマルティナを横に、エリックとブラッドリーは話を進めて、いつの間にか家令に段取りを伝えていた。
エリックは素早くマルティナの全身のサイズを計って、メモした。
「時間がないみたいだから、すぐにブラッドリーの商会に送ってもらうように頼んでおいたわ。手直しが終わったらすぐにドレス、送るから。今回はマルティナちゃんの希望は聞けないけど、アタシのセンスにまかせてちょーだい。
あと、ドレスを着るなら、ちゃんと髪とお肌のお手入れしなさい! ほら、これなら自分でお手入れできるから! なんとアタシのお手製美容液よ。お試しだから、無料無料。ちょっとはパーティまでに自分を磨きなさい」
「ドレスに関してはエリックに任せて大丈夫だから。ちゃんと眠るんだぞ」
エリックから、美容液の一式を押し付けられて、ブラッドリーからやさしい一言をかけられて、お茶も飲まずに二人は嵐のように去っていった。
「マルティナ姉さまのお友達、楽しい人達だったねぇ。いいお友達ができてよかったね」
事態の早さについていけず、呆然と佇むマルティナの横で、リリアンはにこにこして、二人を見送った。
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ブラッドリーの提案で相変わらず昼休憩も、生徒会室でとっている。エリックは顔が広く、クラスの友達との交流もあるので、週の半分くらいの参加率だ。
授業後は、週に一回くらいは他の生徒会役員が顔を出すが、毎日いるのはブラッドリーとエリックとマルティナだけで、三人で粛々と仕事を進めていった。
ブラッドリーは面倒見がよく、最高学年になって難易度の上がった姉の範囲の勉強を見てくれたり、昼食時に、マルティナに果物や菓子を差し入れてくれた。
はじめは遠慮していたが、結局押しの強さに負けて受け取ることになるので、最近は素直に受け取っている。
今日の昼食は、エリックも来ていて三人だ。
「なぁ、マルティナ。確かに生徒会の仕事増えたけど、それにしても顔色悪くないか?」
「……もうすぐ、姉の誕生日パーティーがあって、ドレスを手直ししないといけなくて……」
「は? 手直し? 自分で? ドレスメーカーがするもんじゃないの?」
「違うの。私のドレスは作ってもらえないから、姉のお下がりのドレスをサイズを直して着ているの。いつも、姉が私に下げるドレスを決めるのがギリギリで……手直しするのもけっこう時間がかかるから、結局、睡眠時間を削るしかなくて……」
ブラッドリーは、いつもマルティナに踏み込んだことを聞いておいて、マルティナの処遇に痛みを感じた顔をする。そんな顔をするくらいなら聞かなければいいのに。マルティナの違和感を見つけると、まっすぐに切り込んでくる。
「伯爵家がドレスを作れないくらい困窮しているわけじゃないんだよな?」
「ええ。母はドレスどころか装飾品から靴まで、完璧にそろえているし、姉にもドレスや宝飾品を十分に買い与えているわ。さらに、姉は公爵家の婚約者からドレスや宝飾品が送られてくるの。妹も毎回ではないけど、作ってもらっているし。まぁ、私はドレスが映える容姿でもないし、姉とは年も近いし、仕方ないの。ね、そんなことよりガーデンパーティーの事考えないと。やることも課題も山積みじゃない」
「……なーエリック、手貸してくんない?」
「んもー仕方ないわね。貸し一つね。利子は恐ろしい勢いで増えてくから覚悟なさいよ」
「……マルティナ、ちょっと、そのドレス預かれないかな?」
「は?」
◇◇
その日の授業後、姉も母も所要で不在とわかっていたので、とりあえずドレスを実際に見てもらうことにした。ブラッドリーの意図はわからないけど、納得しないと引かないことは知っていた。
こんな形で二人を家に招くことになるとは思わなかったとマルティナは遠い目をする。
突然、異国の生徒を家に連れてきたことに、家令は一瞬驚いていたが、二人が学園の制服を着ていることと、貴族より貴族然とした整った容姿をしているため、すんなり通された。
「前にちらっと話したけど、私、隣国でドレスメーカーを姉と立ち上げていて、ドレスや服飾のデザイナーしてるのよね。普段はデザイン専門なんだけど、針を持つところからはじめたから、服やドレスは一通り作れるのよ」
「まぁ、こんなやつだけど、腕は確かなんだ」
ブラッドリーやエリックに関して、驚くことはもうないと思っていたけど、まだまだ引き出しはたくさんあるらしい。マルティナにはエリックがドレスのデザインの仕事をしていることと、自分の直さなければいけないドレスのつながりがわからないけど。
「で、で、で、ドレスはどこにあるのーーーー?」
初対面の時には怒涛の勢いで話しかけてきたエリックだけど、その後一緒に時間を過ごすようになって、ブラッドリーが話すばっかりで、エリックが話すことはあまりなかった。そのエリックが普段見せないような鬼気迫った表情でマルティナに迫る。その勢いに押されるように、マルティナの自分のガラガラの衣装部屋に案内する。
「えええええーー壊滅的に似合ってない! チェンジ!! えっないの? これしかないの? …もーこの色味がそもそも、合ってないのよう。なによ、凹まないで。マルティナちゃんに似合ってないだけで、マルティナちゃんが悪いわけでもドレスが悪いわけでもないわよ」
ドレスを見たエリックの絶叫が響き渡った。咎められたような気がしてうつむくと、すかさず、エリックからのフォローが入る。いつもの十倍は早口で話していて、口をはさめない。
「んーサイズもお胸が余っちゃってるし、肩のラインもなんか違うのよねーーあーー腕がなる」
エリックがドレスを細かいところまでチェックして、ブツブツとなにやらつぶやき、一人の世界に入ってしまったので、お茶の用意をしようと気をとりなおす。
「ねーさまーーーあーそびーましょーー」
バーンと扉が開く。
また、空気を読まない人が現れた。母と姉の予定を思い出すのに手一杯で、妹のことを忘れていた。
「あらー、かわいい子猫ちゃんがもう一匹♪」
「マルティナ姉さまのお友達? 私、リリアンっていうの」
一応、思い出したかのようにカーテシーをする。カーテシーは及第点だが、発言内容は淑女として失格だ。
「マルティナ姉さま、ドレスかわいいね。でも、マルティナ姉さまに似会ってない。なんで、マルティナ姉さまは新しいドレス、買ってもらえないの? マルティナ姉さまはもっとシュッとしてて、深い色のが似合うのに!」
「あーら、アナタ見る目あるじゃなーい。そうなの、マルティナちゃんにはこんなパキッとしたピンクのフリフリキラキラのドレスじゃなくって、もっとシンプルで深みのある色のドレスのが似合うの。
せっかく可愛い顔してて、スタイルもスレンダーなのに、素材の無駄遣い! はー、もっと似合うドレス着せたいわぁ」
突撃してきたリリアンにあまり驚くこともなくエリックは普通に会話している。妹をブラッドリーとエリックに紹介する隙も無い。
「そういえば、あんたんとこで立ち上げたレンタルドレスでなんとかしたらどうなの?」
ずっと静かに様子を見守っていたブラッドリーにエリックが声をかける。
「ああ、その手があったか……」
「ごめんなさい、ブラッドリー。レンタルドレスにお金を出せないんです。エリック、ドレスのリメイクも、お金を払えないので……二人ともわざわざ家にまで出向いてもらって申し訳ないけど、ごめんなさい……」
やっとブラッドリーの意図がわかって、申し訳なくて、自分が惨めで情けなくてマルティナは顔が上げられない。
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「だから、おまえは…」
「えーこのお姉さん、マルティナ姉さまのコンヤクシャなの?」
「違う。違う。ただの同級生だ!!!」
エリックとリリアンとブラッドリーの混とんとした会話のどこから訂正していいかわからず、口をはさめないマルティナを横に、エリックとブラッドリーは話を進めて、いつの間にか家令に段取りを伝えていた。
エリックは素早くマルティナの全身のサイズを計って、メモした。
「時間がないみたいだから、すぐにブラッドリーの商会に送ってもらうように頼んでおいたわ。手直しが終わったらすぐにドレス、送るから。今回はマルティナちゃんの希望は聞けないけど、アタシのセンスにまかせてちょーだい。
あと、ドレスを着るなら、ちゃんと髪とお肌のお手入れしなさい! ほら、これなら自分でお手入れできるから! なんとアタシのお手製美容液よ。お試しだから、無料無料。ちょっとはパーティまでに自分を磨きなさい」
「ドレスに関してはエリックに任せて大丈夫だから。ちゃんと眠るんだぞ」
エリックから、美容液の一式を押し付けられて、ブラッドリーからやさしい一言をかけられて、お茶も飲まずに二人は嵐のように去っていった。
「マルティナ姉さまのお友達、楽しい人達だったねぇ。いいお友達ができてよかったね」
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