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番外編
side クリストファー② 立派な公爵家当主になった私
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アイリーンと婚約し、その浮かれる気持ちを隠しきれていると思っていた自分のつかの間の幸せはすぐに消えた。アイリーンの外側にたぶらかされて、その中身をきちんと見れていなかったようだと気づいたのは結婚した後だった。
結婚式に来た賓客と気の利いた会話ができない。
結婚式に来た客への御礼状が書けない。
公爵家での茶会の段取りができない。
外国語は得意だし、字も綺麗だが、アイリーンは自分の持つ情報を組み合わせて考えたり、物事を段取りすることが苦手なことが判明した。貴族特有の遠回しな言い回しや腹のさぐりあいのような会話もできない。もともと苦手な上に、学園時代に、そういった課題や生徒会の仕事を妹に丸投げしていたせいで、公爵夫人に求められるそれらの事がまったくできない。
心待ちにしていた初夜もおざなりに終わり、はじまった新婚生活はすぐに幕を閉じた。
「仕方ないから、フェザーストン侯爵家のアンジェリカをあなたの秘書にするから。彼女にアイリーンができなかった次期公爵夫人の仕事をしてもらいます。わかっているわね、クリストファー。これはあなたの選択の結果なのよ。もう、この公爵家に釣り合うのはアンジェリカぐらいしかいないのよ。フェザーストン侯爵家にも借りを作っちゃったし……アイリーンの処遇はどうしましょうねぇ、病気になって徐々に弱って儚くなってもらうしかないかしら?」
「お母様、アイリーンは公爵領の片隅に幽閉します。私の判断ミスなので、私財で彼女の面倒を一生みます」
瞼の裏に浮かぶのはうさぎのぬいぐるみ。母の残酷な提案に頷くことはできない。アイリーンのしたことも酷いが、アイリーンに執着し、巻き込んだのは自分だ。
「ふーん。まぁいいわ、見抜けなかった私の責任もあるし、許可しましょう。わかっているわよね? クリストファー、あなたは公爵家の当主なのよ。今日からアンジェリカと寝なさい。子どもが出来たら、アンジェリカと結婚して、公爵家を継ぐのよ」
母の冷えた目線に、アイリーンへの執着もなにもかも見透かされていたのだと知る。クリストファーは母と父の手の平の上で踊らされていたのだ。きっとクリストファーに知らしめたかったのだろう。公爵家当主は大事な物を、弱みになりそうな物を作ってはいけない。そして、もし大事なものがあっても、公爵家と秤にかけ、時には無常に切り捨てなければいけないことを。自分を殺し、心を消して、公爵家と公爵領の領民を守るために。それが、クリストファーの存在意義なのだ。
アイリーンを村まで送る役目を他人に任せることはできなかった。それは最後の抵抗だったのかもしれない。馬車で一日もかからない距離にある公爵家の片隅の村に送るのに五日をかけた。王都から近い場所に幽閉されているとわかると王都まで逃げ出すかもしれない、と理由をつけて。実際は自分の初恋との別れを惜しんでいたのかもしれない。
最後まですがるアイリーンの身勝手な言い分に腸が煮えくり返るのに、涙のたまった瞳で見つめられると抱きしめてしまいたくなる。バラバラになりそうな自分の心を切り捨てて、無情な夫を演じきった。安全で安心して暮らせる環境を選んだのは、どこかに情が残っていたのかもしれない。アイリーンを公爵領の片隅のレッドフォード公爵家の暗部の人々が暮らす村に置いて帰る馬車の中、クリストファーは一人静かに涙を流した。
会いたい。顔が見たい。裏切られて、中身は空っぽで最低な女だとわかっても、なお焦がれる気持ちが消えない。
姿絵だけでも、残しておけばよかった。クリストファーはアイリーンへの執着を悟られないように、姿絵を描かせることはなかったし、自分の色を贈ったことはない。アイリーンからの贈り物もそれに添えられたメッセージカードも目に焼き付けた後、全て捨てていた。アイリーンへの執着を悟られないように。自分が公爵夫人として不要だと切り捨てたのに、脳裏によぎるのはアイリーンの姿。
ずっとクリストファーに執着していたアンジェリカは学園時代の優秀な成績と相違なく、公爵夫人の仕事をこなした。まるで、はじめからアンジェリカがクリストファーの伴侶であったかのように。
しかし、夜を迎えるのは苦痛だった。
「何、被害者みたいな顔してるの? こっちの方が最悪なんだけど? いつまでもアイリーンに執着してないで、割り切りなさいよ」
妖艶にほほ笑むアンジェリカは、閨事が初めてではなかった。
「クリストファーってほんと、顔だけよね。つまんないし、気持ちよくないし」
なんとかその苦痛な行為を義務的に終わらせた後も、辛辣だった。
「閨事を他でもしているのか?」
「だって、お父様はずっとレッドフォード公爵家を狙っているし、どうにかアイリーンを追い落とすか、どこかの後妻に入るかしか道がなかったんだもの。なんで、純潔を守る必要があるの? 安心してよ。公爵家当主夫婦もご存じだし、病気の検査もしているし、妊娠していないことも確認してから入っているわ。あなたの子を身ごもるまではあなたで我慢するから。まぁ、子どもを二、三人産んだら、お互い好きにしましょ」
アンジェリカから語られる言葉は正論で、アンジェリカも侯爵家の駒としての自分を全うしているのだろう。クリストファーも割り切らなければいけなかったのだ。それでも、心に黒い染みが広がっていくのを感じた。
自分は弱いのだろうか。
なぜ、他の貴族のように、父のように、母のように、アンジェリカのように割り切れないのだろうか?
きっと公爵家を背負える器ではないのだろう。
そう思ったところで、公爵家には自分しか子どもがいない。簡単に自分の責務を投げ出すことはできなかった。
なんでもない顔をして、昼間は父やアンジェリカと公爵家の仕事をして、夜はアンジェリカと寝る。まるで人形のように機械的に日々を送っていた。
「よう、クリストファー、相変わらず冴えない顔してるな?」
アイリーンを幽閉して一年経つ頃に、外国を放浪していた叔父がふらりと姿を現した。自由奔放な叔父は貴族の鏡のような父とはそりが合わず、数年間、顔を合わせていない。
一か所にとどまることのなかった叔父がなぜか公爵家に落ち着いた。父も母も特に反対する様子はない。まるで、はじめからそこで暮らしていたかのように自然になじんでいった。
叔父は、昼間は父とクリストファーの仕事の手伝いをし、クリストファーやアンジェリカと雑談して過ごしたので、クリストファーは少し息がつける気がした。気持ちにゆとりができたからなのか、アンジェリカが身ごもった。アンジェリカが妊娠している間は夜の営みをしなくてもよい。そのことにもクリストファーはほっとした。
アンジェリカを第二夫人として迎え、盛大な結婚式をして、無事、長男が生まれた。第一夫人の病気療養、そしてすぐに迎えられた第二夫人という醜聞は、公爵家の金と権力で揉みつぶし、父から爵位を譲られ公爵家当主となった。それは傍から見たら、順風満帆な人生だろう。
父と母はしばらく邸に留まったが、長男が生まれてから公爵邸から出て、別の屋敷で暮らし始めた。クリストファーは監視する人がいなくなりほっとする気持ちと、これから自分一人で背負って行かなければならないというプレッシャーと二つの気持ちに挟まれた。
クリストファーは心のどこかに渇望を感じながらも、心を殺し、表情を消してレッドフォード公爵家の当主として立ち続けた。
その心にヒビが入ったのは、アイリーンを幽閉して三年が経った頃だった。
「ふふ、他から聞いても嫌だろうから、伝えとくわね。あの子、あなたの子どもじゃないから。叔父さんとの子どもなの」
アンジェリカとは外聞を気にして、同じ寝室で寝ていた。長男が生まれてからもそういった行為はしていない。そろそろ、二人目をと言われる頃かと戦々恐々としていた時にアンジェリカから告げられた。
「は?」
「あなた、子種がないんですって。子どもの頃流行り病にかかったでしょ? その時高熱を出しているから、そのせいで、子種が死んでしまったそうよ。なによ、私だって、この家に入ってから聞かされたのよ。それでもご両親はあなたが可愛かったんでしょうね。もしかしたらと私と同衾させたけど、できる気配がない。それで叔父さんを呼び戻して、めでたくご懐妊ってわけ」
「叔父さんと寝て、できた子どもなのか……?」
「だから、いちいち、被害者みたいな顔をしないでよ。お母様から頼まれたのよ! その時の私の屈辱的な気持ちわかる? まぁ、あなたのことなんて愛していないけど、どれだけこの公爵家は私をないがしろにするのかしらね? さすがにお義父様と寝るのは無理だたから、叔父様が呼び戻されたってわけよ。だから、安心してね。そろそろ二人目が必要だけど、あなたと私が寝る必要はないから。まぁ、あなたに嫌々抱かれるより、叔父さんの方がよっぽどましだけど。彼、経験豊富ですっごく上手なのよね」
自分の子どもだと思っていたのは、アンジェリカと叔父との間にできた子ども。
それを指示したのは、父と母。
叔父はアンジェリカとの間に子どもを作るために帰ってきた。
自分には子種がない。
自分が割り切れなかったのがいけないのか、自分の体が出来損ないだからいけないのか。
色々な情報と感情がぐるぐるとクリストファーの中を駆け巡るが、アンジェリカも被害者だ。それをぶつけるわけにはいかない。
父も母も叔父もアンジェリカも公爵家のためにしているのだ。
わかっていても、クリストファーの心にはヒビが入って、ギシギシと軋む。
執務中に、ふと窓から外を見ると、庭で叔父とアンジェリカが仲睦まじく長男と遊んでいる。まるで本当の親子のように。そこから目線を外して、仕事に没頭する。最近はクリストファーは夫婦の寝室で寝ていない。全てを忘れたくて、ただひたすら仕事をして、気絶するように執務室の仮眠室で眠りをとる。どんどん擦り切れていく心に気づかないふりをして。
結婚式に来た賓客と気の利いた会話ができない。
結婚式に来た客への御礼状が書けない。
公爵家での茶会の段取りができない。
外国語は得意だし、字も綺麗だが、アイリーンは自分の持つ情報を組み合わせて考えたり、物事を段取りすることが苦手なことが判明した。貴族特有の遠回しな言い回しや腹のさぐりあいのような会話もできない。もともと苦手な上に、学園時代に、そういった課題や生徒会の仕事を妹に丸投げしていたせいで、公爵夫人に求められるそれらの事がまったくできない。
心待ちにしていた初夜もおざなりに終わり、はじまった新婚生活はすぐに幕を閉じた。
「仕方ないから、フェザーストン侯爵家のアンジェリカをあなたの秘書にするから。彼女にアイリーンができなかった次期公爵夫人の仕事をしてもらいます。わかっているわね、クリストファー。これはあなたの選択の結果なのよ。もう、この公爵家に釣り合うのはアンジェリカぐらいしかいないのよ。フェザーストン侯爵家にも借りを作っちゃったし……アイリーンの処遇はどうしましょうねぇ、病気になって徐々に弱って儚くなってもらうしかないかしら?」
「お母様、アイリーンは公爵領の片隅に幽閉します。私の判断ミスなので、私財で彼女の面倒を一生みます」
瞼の裏に浮かぶのはうさぎのぬいぐるみ。母の残酷な提案に頷くことはできない。アイリーンのしたことも酷いが、アイリーンに執着し、巻き込んだのは自分だ。
「ふーん。まぁいいわ、見抜けなかった私の責任もあるし、許可しましょう。わかっているわよね? クリストファー、あなたは公爵家の当主なのよ。今日からアンジェリカと寝なさい。子どもが出来たら、アンジェリカと結婚して、公爵家を継ぐのよ」
母の冷えた目線に、アイリーンへの執着もなにもかも見透かされていたのだと知る。クリストファーは母と父の手の平の上で踊らされていたのだ。きっとクリストファーに知らしめたかったのだろう。公爵家当主は大事な物を、弱みになりそうな物を作ってはいけない。そして、もし大事なものがあっても、公爵家と秤にかけ、時には無常に切り捨てなければいけないことを。自分を殺し、心を消して、公爵家と公爵領の領民を守るために。それが、クリストファーの存在意義なのだ。
アイリーンを村まで送る役目を他人に任せることはできなかった。それは最後の抵抗だったのかもしれない。馬車で一日もかからない距離にある公爵家の片隅の村に送るのに五日をかけた。王都から近い場所に幽閉されているとわかると王都まで逃げ出すかもしれない、と理由をつけて。実際は自分の初恋との別れを惜しんでいたのかもしれない。
最後まですがるアイリーンの身勝手な言い分に腸が煮えくり返るのに、涙のたまった瞳で見つめられると抱きしめてしまいたくなる。バラバラになりそうな自分の心を切り捨てて、無情な夫を演じきった。安全で安心して暮らせる環境を選んだのは、どこかに情が残っていたのかもしれない。アイリーンを公爵領の片隅のレッドフォード公爵家の暗部の人々が暮らす村に置いて帰る馬車の中、クリストファーは一人静かに涙を流した。
会いたい。顔が見たい。裏切られて、中身は空っぽで最低な女だとわかっても、なお焦がれる気持ちが消えない。
姿絵だけでも、残しておけばよかった。クリストファーはアイリーンへの執着を悟られないように、姿絵を描かせることはなかったし、自分の色を贈ったことはない。アイリーンからの贈り物もそれに添えられたメッセージカードも目に焼き付けた後、全て捨てていた。アイリーンへの執着を悟られないように。自分が公爵夫人として不要だと切り捨てたのに、脳裏によぎるのはアイリーンの姿。
ずっとクリストファーに執着していたアンジェリカは学園時代の優秀な成績と相違なく、公爵夫人の仕事をこなした。まるで、はじめからアンジェリカがクリストファーの伴侶であったかのように。
しかし、夜を迎えるのは苦痛だった。
「何、被害者みたいな顔してるの? こっちの方が最悪なんだけど? いつまでもアイリーンに執着してないで、割り切りなさいよ」
妖艶にほほ笑むアンジェリカは、閨事が初めてではなかった。
「クリストファーってほんと、顔だけよね。つまんないし、気持ちよくないし」
なんとかその苦痛な行為を義務的に終わらせた後も、辛辣だった。
「閨事を他でもしているのか?」
「だって、お父様はずっとレッドフォード公爵家を狙っているし、どうにかアイリーンを追い落とすか、どこかの後妻に入るかしか道がなかったんだもの。なんで、純潔を守る必要があるの? 安心してよ。公爵家当主夫婦もご存じだし、病気の検査もしているし、妊娠していないことも確認してから入っているわ。あなたの子を身ごもるまではあなたで我慢するから。まぁ、子どもを二、三人産んだら、お互い好きにしましょ」
アンジェリカから語られる言葉は正論で、アンジェリカも侯爵家の駒としての自分を全うしているのだろう。クリストファーも割り切らなければいけなかったのだ。それでも、心に黒い染みが広がっていくのを感じた。
自分は弱いのだろうか。
なぜ、他の貴族のように、父のように、母のように、アンジェリカのように割り切れないのだろうか?
きっと公爵家を背負える器ではないのだろう。
そう思ったところで、公爵家には自分しか子どもがいない。簡単に自分の責務を投げ出すことはできなかった。
なんでもない顔をして、昼間は父やアンジェリカと公爵家の仕事をして、夜はアンジェリカと寝る。まるで人形のように機械的に日々を送っていた。
「よう、クリストファー、相変わらず冴えない顔してるな?」
アイリーンを幽閉して一年経つ頃に、外国を放浪していた叔父がふらりと姿を現した。自由奔放な叔父は貴族の鏡のような父とはそりが合わず、数年間、顔を合わせていない。
一か所にとどまることのなかった叔父がなぜか公爵家に落ち着いた。父も母も特に反対する様子はない。まるで、はじめからそこで暮らしていたかのように自然になじんでいった。
叔父は、昼間は父とクリストファーの仕事の手伝いをし、クリストファーやアンジェリカと雑談して過ごしたので、クリストファーは少し息がつける気がした。気持ちにゆとりができたからなのか、アンジェリカが身ごもった。アンジェリカが妊娠している間は夜の営みをしなくてもよい。そのことにもクリストファーはほっとした。
アンジェリカを第二夫人として迎え、盛大な結婚式をして、無事、長男が生まれた。第一夫人の病気療養、そしてすぐに迎えられた第二夫人という醜聞は、公爵家の金と権力で揉みつぶし、父から爵位を譲られ公爵家当主となった。それは傍から見たら、順風満帆な人生だろう。
父と母はしばらく邸に留まったが、長男が生まれてから公爵邸から出て、別の屋敷で暮らし始めた。クリストファーは監視する人がいなくなりほっとする気持ちと、これから自分一人で背負って行かなければならないというプレッシャーと二つの気持ちに挟まれた。
クリストファーは心のどこかに渇望を感じながらも、心を殺し、表情を消してレッドフォード公爵家の当主として立ち続けた。
その心にヒビが入ったのは、アイリーンを幽閉して三年が経った頃だった。
「ふふ、他から聞いても嫌だろうから、伝えとくわね。あの子、あなたの子どもじゃないから。叔父さんとの子どもなの」
アンジェリカとは外聞を気にして、同じ寝室で寝ていた。長男が生まれてからもそういった行為はしていない。そろそろ、二人目をと言われる頃かと戦々恐々としていた時にアンジェリカから告げられた。
「は?」
「あなた、子種がないんですって。子どもの頃流行り病にかかったでしょ? その時高熱を出しているから、そのせいで、子種が死んでしまったそうよ。なによ、私だって、この家に入ってから聞かされたのよ。それでもご両親はあなたが可愛かったんでしょうね。もしかしたらと私と同衾させたけど、できる気配がない。それで叔父さんを呼び戻して、めでたくご懐妊ってわけ」
「叔父さんと寝て、できた子どもなのか……?」
「だから、いちいち、被害者みたいな顔をしないでよ。お母様から頼まれたのよ! その時の私の屈辱的な気持ちわかる? まぁ、あなたのことなんて愛していないけど、どれだけこの公爵家は私をないがしろにするのかしらね? さすがにお義父様と寝るのは無理だたから、叔父様が呼び戻されたってわけよ。だから、安心してね。そろそろ二人目が必要だけど、あなたと私が寝る必要はないから。まぁ、あなたに嫌々抱かれるより、叔父さんの方がよっぽどましだけど。彼、経験豊富ですっごく上手なのよね」
自分の子どもだと思っていたのは、アンジェリカと叔父との間にできた子ども。
それを指示したのは、父と母。
叔父はアンジェリカとの間に子どもを作るために帰ってきた。
自分には子種がない。
自分が割り切れなかったのがいけないのか、自分の体が出来損ないだからいけないのか。
色々な情報と感情がぐるぐるとクリストファーの中を駆け巡るが、アンジェリカも被害者だ。それをぶつけるわけにはいかない。
父も母も叔父もアンジェリカも公爵家のためにしているのだ。
わかっていても、クリストファーの心にはヒビが入って、ギシギシと軋む。
執務中に、ふと窓から外を見ると、庭で叔父とアンジェリカが仲睦まじく長男と遊んでいる。まるで本当の親子のように。そこから目線を外して、仕事に没頭する。最近はクリストファーは夫婦の寝室で寝ていない。全てを忘れたくて、ただひたすら仕事をして、気絶するように執務室の仮眠室で眠りをとる。どんどん擦り切れていく心に気づかないふりをして。
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